カメレオンとタコ (ページ11)

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深夜ドラマページ11

ドラマ撮影やバラエティ撮影の連続や打ち合わせで、仕事が完全に終わったのは11時半過ぎだった。
疲れが溜まった身体を引き摺りながら帰宅する。

明日は午前中だけオフだ。シャワーを浴びたらさっさと寝よう。思い切り寝よう。そう心に決めながら欠伸をかみ殺す。

「早く寝よ…」

自宅に帰って、シャワーをパパッと浴びて、部屋着に着替える。

ドライヤーで濡れた髪を乾かしている間、暇だったので時間つぶしに何気なくテレビを点けた。

すると、テレビでちょうどドラマがやっていた。
一体どんな内容だろうとテレビを観る。

主人公らしき男の人が、大勢のヤクザみたいな男たちに取り押さえられているシーン。
彼の前には大きな革張りのソファに座る人が。

『おいおい誰にクチ聞いたんだ？あ？』

低いけど女の人の声。ドラマの中では口は悪いけど、自分がよく知っていて、好きな声。

「Aちゃんだ…」

サングラスを掛けて、右手には煙草。彼女も縞模様の黒スーツを着ている。
威圧感は普段の彼女からは想像できないほど強い。

なんだか眠気が少し吹き飛んだ。思わず前のめりになって観てしまう。

『す、す、すみません！へ、ヘマするつもりはなかったんですッ！！』
『兄ちゃんよぉ、謝罪する気あんなら、もっと床に頭擦り付けろよ、なァおい聞いてんのかよこのボンクラがよお！！！』

演出なのか映像が少し揺れている。
主人公の頭を足で強く踏んで床に擦り付けさせる暴力的なシーンだ。怖いし痛そう。

グリグリと踏みつけられた後は、ソファから降りたAちゃんが主人公の髪の毛を鷲掴み、無理矢理顔を上げさせる。

『テメェよ、ヘマしたらそれ相応の落とし前があんだろ？おい宮田！！コイツに指詰めさせる準備しろ！！』
『え、いや、しかし姐御…』
『あ゛？テメェもコイツと同じようになりてぇのか？なァ！？』

Aちゃんヤクザの組長的な役なんだ。部下っぽい人は高杉亘さんだ。どっちも迫力がある。

早く寝ようと思ったのに、展開が気になってきて、眠気どころではなくなってきた。
残り約30分のドラマを、俺は食い入るように観続けた。

結局主人公は指を詰めるなんてそんな15禁もののことはせず、運良くAちゃん(の役)の携帯に電話がかかって、事なきを得た。
その後、自分のミスをなんとか巻き返し、彼女に気に入られることになったのだった。

やっぱりAちゃんの演技は凄いなぁ、と思いながら、その日は寝床についた。