最後に勝つのは ページ49
幾年も経ち、すっかり廓・馬酔木のある島には行かなくなった。
しかし、何の因果かそこは白ヒゲの支配下となった。そして見廻りは俺になった。
「グララララララ!!行きたくねェみたいだな、イゾウ」
「オヤジの為なら行くさ」
苦笑しながら、俺は袂を直した。
島に着くと、盛んに貿易船から人間が乗り降りしていた。船上では日に焼け、健康的な肌の色をした凛々しい面立ちの男が指示を飛ばしている。
独特の言葉遣いに、思わず耳を澄ませてしまった。
『そらそら、どきなすって。わっちの店を知らんとは言いなさんな。天下の馬酔木屋でありんす。これ、坊主。わっちの荷物はそっちじゃないよ、あそこに持ってお行き。…手を抜くんじゃないよ、青坊主!!』
「「はい、姐さん!!」」
「A……?」
『気安くわっちを呼ぶのは誰だい?……お前さんは』
男はあの日以来、本当に会わなくなっていたAであった。向こうも驚いたらしく、動きを止めた。近くに立っていた体躯の良い若者は訝しげにしながら、俺を警戒する。
『…お下がり。わっちの客だよ』
「はい、姐さん」
『上がっておくれ、茶でも用意させる』
船室の一つに通され、ゆらゆらと湯気の立ち上る茶が出された。
『一体、どういう了見でありんすか。わっちの前に姿を見せて』
「…今、どうしてるかと、思ってな」
『………妹子どもを買い上げて、この店を開いたでありんす。旦那様は早々にわっちを置いて逝かれたから、今はわっちが切り盛りしとるんよ。馬酔木の妹子の借金の肩代わりはこれで、お仕舞いやわ』
遠い目をするAに、今までの苦労を感じる。俺が海に出ている間に、どれだけの思いをしてきていたのか…
「…お前自身の借金と、妹分の借金を返すのに、結納したって話は、初耳だった。そんなことも知らず、俺は航海していた……今でもお前を忘れたことはねェ。俺と結び直してはくれねェか」
『甘いこと言うなぁ、イゾウさん。わっちをそこらの未亡人と同じにせんといて……お前さんがわっちと結ばれるんじゃのうて、わっちがお前さんを縛りつけるのえ』
「…は」
「姐さん!!支度が整いました!!!」
「いつでも出せます!」
『これからわっちが旦那さね!!わっちの奥を、可愛がっておやり!!!』
「「わかりやした、旦那様!!!」」
突然大声を上げながら男が入ってきたかと思うと、何やら驚きの言葉が飛び交う。
なんだなんだと思っている内に甲板へと連れ出された。
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おトク(プロフ) - 妄想して寝れる…んんんおじさま受け最高しんどい (2019年7月31日 18時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - はじめまして佐渡の音さん感動的でしたほとんどが泣ける話で泣きたくなったときに読ませて貰います。涙が止まりません。これからも更新頑張って下さい。応援しています。 (2017年10月7日 13時) (レス) id: 09ba0af9d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐渡の音 | 作成日時：2017年6月30日 23時
