駆引き失敗 ページ48
いつかの思いつき 捏造 切甘 ｲｿﾞｳ
『わっちのこと、お見捨てになるの』
「…誰もそうとは言っちゃいねェ」
『同じことやわ。わっちを買うのはお前さんの他に居ないんよ…男として見てくれるのは、お前さんだけ』
艶かしい着物姿で、煙管を横に置くのはA。イゾウが足繁く通う廓・馬酔木の花魁である。
その美しさは他に類なく、人間であるかすら疑う。
「…遠くの海に行く」
『前にも同じこと言うてたわ。わっちを買う為に、ぎょうさん船襲うた…でも足りひんから、まだ待っとって…まだまだ……わっちはお前さんが好きやから、いくらでも待つつもりやった。けどな、もう待てんのや』
イゾウへの酌を止め、禿を呼ぶ。
『わっちは上がるから、妹子に代わるよう言うて』
「はい、姉さん」
「A、まだ夜は」
『床を買われてるの。お前さんは買ったことない、わっちの床をね』
禿は手際よく猪口を片付け、新たに酒を足してAと退室した。
一月経って、イゾウは漸く馬酔木に足を運んだ。
遣手に声を掛けると、怪訝そうな顔をされる。
「あの子はもう居ませんが…他の子となら初会からですよ」
「…居ない?」
「今日、お天道さんが真上に来る頃、祝言を上げるんですよ。あたしらの一生懸けても足りない金を積まれてね」
いつからそんな話が、いやそれよりどうして馴染みの俺にすら話してくれなかったのか。
『イゾウさん、何時いらしたのでありんす?』
「先刻、着いた。お前が身請けされたと聞いて」
『わっちは幸せでありんす。借りた金はようやっと無くなって…ほんに愛しい言うてくれる旦那様に拾うて貰った。わっち、ややこは無理やと言うたけど、それでもいいって』
綺麗な笑顔を浮かべるAは、それでも泣いていた。
『意気地なし。イゾウさんが早に金貯まって、わっちを身請けしようとして迷ってたのは知ってたんよ。わっちが本当にイゾウさんを好いているか、心配やったんでしょ?ずっと好いとうよって、言うてたのに』
「A、俺は」
『…』
イゾウはAの手を取る。大粒の涙をぽろぽろと落とすAに胸を突かれるが、それでも美しかった。
『……わっち、これから粧すでありんす。お前さんとは太夫と客の間柄ではもうないこと、念頭に置いておくれな』
「Aっ」
「旦那様がお待ちです、急ぎ支度を」
Aには劣るが、それなりに美しい青年が迎えに来た。
『次はもうのうございます』
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おトク(プロフ) - 妄想して寝れる…んんんおじさま受け最高しんどい (2019年7月31日 18時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - はじめまして佐渡の音さん感動的でしたほとんどが泣ける話で泣きたくなったときに読ませて貰います。涙が止まりません。これからも更新頑張って下さい。応援しています。 (2017年10月7日 13時) (レス) id: 09ba0af9d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐渡の音 | 作成日時：2017年6月30日 23時
