忘れてていいよ ページ30
×サボ
サボさんが、変わった。
ある日、頂上決戦のニュースが載った新聞を見て、そこから半狂乱になったらしい。
ようやく落ち着いた時、サボさんは別人になっていた。
新聞を読んで、兄弟を思い出した代わりに、今度は僕のことを忘れたようであった。
僕のことを忘れた彼は、革命軍を連れて酒場に訪れた。僕が経営するここに入ってきたのも、ただの偶然らしい。
今までは、僕が危ない目に遭わないようにと、革命軍を誰一人として連れて来なかったのに。
『いらっしゃいませ。こちら、本日のオススメメニューです』
「うん?他の奴らには渡してねェだろ?」
『……常連に、似ていたもので』
革命軍に通じる人は何もサボさんだけではない。僕にだってツテはある。
例えばドラゴンさん。彼とは数年前まで一緒に動いていた。そんな人とは今でも付き合いはある。
ドラゴンさんからサボさんの近況を聞いて、更に上の会話を交わしたことでわかった。
僕のことは忘れてしまったのだ、
恋人であったことすらも。
「店を、か」
『うん、もう疲れた。さっさとここを閉めて、また君と世界を動き回ることにするよ』
「…そうか」
ドラゴンさんが久し振りに来てくれた。高い酒を用意し、とくとくと注いだ。
もういいかな、そう考えるようになっていた。
『あの頃の高揚をまた、味わいたい気もするんだ。ドラゴンさん、また仕事を回してくれるかい』
「お前は優秀だからな…」
『ありがとう』
そんな会話をしていると、入店のベルが鳴った。
『すみません、今日はもう…』
「なぁ!!Aってのは、お前か!?」
『え、えぇ、そうですが』
顔を上げると、そこにはサボさんがいた。なんだか焦った表情で、走って来たのか息も上がっている。
「日記の中に、名前があって…誰かわからなかったんだが、オススメメニューの話で、お前だって気付いて……今は、忘れてるけどよ、すぐ、思い出すから」
『結構ですよ。この店も閉めますから』
「え?」
唖然とするサボさんを尻目に、ふと振り返る。空いたグラスがあるだけで、ドラゴンさんの姿はなかった。
『…人足も減ってきて、経営が難しくて。ちょうどこの町も革命軍が避難をさせてくれるという話ですし、ついでに他の町に行こうかと』
「そ、そうなのか」
真実と虚構を混ぜながら、まるで他人事のように事情を説明する。
恋人である僕を忘れるほど、兄弟は大切なようで。
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おトク(プロフ) - 妄想して寝れる…んんんおじさま受け最高しんどい (2019年7月31日 18時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - はじめまして佐渡の音さん感動的でしたほとんどが泣ける話で泣きたくなったときに読ませて貰います。涙が止まりません。これからも更新頑張って下さい。応援しています。 (2017年10月7日 13時) (レス) id: 09ba0af9d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐渡の音 | 作成日時：2017年6月30日 23時
