いかないで ページ28
「A、もういい。怪我してるんだから」
『サッチさん』
「早く医者に見せよう」
『サッチさん』
「なぁ、早く上がろうぜ」
『サッチさん』
Aの嗜めるような声で、漸く口を閉じるサッチ。
『いいんだよ。どうせ助からないんだから』
「A、止めろそんなこと言うなんて…」
『サッチさん。僕、貴方に会えて良かった。オヤジに会えて良かった……』
Aはにっこりと笑顔を浮かべ、指を鳴らすと海水が腕の形を模し、船に向かっていく。
『ティーチ!僕を殺そうとするまでは許してやっても良かったものを…!!恋人、挙げ句家族に手を出した罪、後悔するがいい!』
怒りの表情を浮かべたAは、低い声で怒鳴りながら、腕を船上に向けて振り上げた。
『”大渦の神“-ﾜﾀﾞﾂﾐ-』
波が大きくうねり、渦を為す。モビーディック号を囲み、何本もの腕が船に侵入する。
ティーチを見つけたそれらは、一切の容赦なく掴み、海に引きずりこんだ。
『一つ、教えてやる。後悔は先に立たずという言葉をな』
「Aーーっ!!」
沈むティーチに冷たい視線を送りながら、船を穏やかに海面へと戻す。
船員達は一同に甲板へと集い、波に乗るA、サッチ、マルコを見守っていた。
海水の腕に支えられ、サッチとマルコは船に乗った。Aは船には乗らず、ゆっくりと上体を倒した。
「A、早くこっちに来いよ…」
『サッチさん、僕のこと……忘れないでください。それだけで…十分だから…』
腕もやがて力を失くし、ゆるゆると落ち始めた。サッチが手を伸ばすも届かず、Aは蒼へと消えた。
『サッチさーん!!』
「ばっ、止めろ!誰か見てるかもしんないだろ!!くっつくな!!!」
『あ、ごめんなさい。つい……えへへ。僕、サッチさんが好いてくれてるだけで十分なのに。甘えたくなっちゃった』
「……いつか、な」
そんないつかなんて、もう来やしない。
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おトク(プロフ) - 妄想して寝れる…んんんおじさま受け最高しんどい (2019年7月31日 18時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - はじめまして佐渡の音さん感動的でしたほとんどが泣ける話で泣きたくなったときに読ませて貰います。涙が止まりません。これからも更新頑張って下さい。応援しています。 (2017年10月7日 13時) (レス) id: 09ba0af9d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐渡の音 | 作成日時：2017年6月30日 23時
