にんにん ページ18
×忍者松四男
「…松野城の殿だ」
『わかった。終わり次第、人を飛ばす』
手元を照らす僅かな灯りのみの部屋には、男が一人酒を飲んでいた。どこからともなく声だけが聞こえ、男は口を開いた。
「しくじるなよ。あのバカさえ始末できれば、天下は俺のものだ」
『………』
返事はせず、天井に隠れていた青年は姿を消す。
翌日。松野城へと侵入すると、夜になるのを待った。
『……?猫?』
大きな猫が、屋根で寛いでいた。偶然鉢合わせた黒装束の青年・Aは、その猫にそろそろと近付く。
どうやら眠っているようで、ピクリともしない。
『にゃ〜ん』
Aは鳴き真似をしながら手を伸ばす。すっと耳の裏に指を通すと、優しく撫でる。眠る猫はやがて喉を鳴らし始めた。
「ぐるぐるぐるぐる」
『か、可愛いな……』
Aは頬を上気させ、我を忘れたように猫を撫でる。
『………無理。可愛い。こんな猫を買う殿様を殺るなんてできない。猫が不憫だ』
「ぐるぐる」
『…よし。依頼主を殺ろう。そうしよう』
Aは決心したようにそう呟き、高く跳躍すると水堀を飛び越え、宵闇に紛れた。
取り残された猫はぽかんとしながらも、室内へと入っていった。
『猫だよ、猫。もう惚れちゃって仕方ないから、この仕事抜ける』
「は!?てめェに幾ら出したと思ってんだ!!!」
『民から奪った金で偉そうに』
悲鳴を上げる間もなく、男は絶命した。屋根裏に潜む黒紫色の装束に包まれた青年に見守られながら……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 27人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
おトク(プロフ) - 妄想して寝れる…んんんおじさま受け最高しんどい (2019年7月31日 18時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
ナナ - はじめまして佐渡の音さん感動的でしたほとんどが泣ける話で泣きたくなったときに読ませて貰います。涙が止まりません。これからも更新頑張って下さい。応援しています。 (2017年10月7日 13時) (レス) id: 09ba0af9d7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：佐渡の音 | 作成日時：2017年6月30日 23時
