愚が二つ ページ16
イゾウ→楽士→サッチ
捏造ｱﾘ
故郷を出たのは、十五の時。同時に海賊を始めた。初めて見る外の世界は、ずっと楽士をやってきた俺にとって新鮮だった。
でも、ここ最近は、そんなことを考えることもなくなってきた。
叶いそうにもない、恋に落ちたのだ。
俺より年下で、同性。偶然助けたソイツに、えらく感謝されて、その様子が可愛かったんだ。
女好きで、面白い頭をした、料理のうまいアイツ……女には優しいから、出会いがあれば、結ばれるだろうな。
『今日も今日とて、良き月だ』
こんな日は、月と波に音を乗せるに限る。
故郷で歌われる、悲恋の唄。叶わぬ恋にかかった若者は、墓の下まで想いを持って行く。誰にも知られぬまま、ひっそり抱えて、持って行く。
その情景が瞼の裏に映る。まるで、未来に俺はこうなると言われているようだった。
『…こんなことなら、海に出るんじゃなかった』
波に音は乗ったが、連れて行ってはくれなかった。だってまだ、俺の胸は、こんなに痛い。
『散ってしまえ、こんな想い』
音に合わせて、体が揺れる。
誰も起きてなどいない。今なら、何をしようが問題ないだろう。
『……………サッチ、俺はお前が大好きなんだ。愛していると言っても過言ではない。それほど、お前を』
「なにシケた面してんだ、A」
『イ、ゾウ………起きてたのか?』
「音がしたからねェ、その琵琶の」
『…………耳がいいんだな。そんなに音を出してなかったのに』
突然現れたイゾウに目を見開くも、Aは隣に来るよう促す。
「今日は、どうしたんだい?」
『…なに、コックが女を捕まえてただけさ』
「そうかいそうかい、さぞ別嬪だったんだろうね」
『!!……う、ん、まぁね。イゾウは、意地悪だな…』
何故か楽器を弾いていると、この男は必ず現れる。自分が心に傷を負うと、決まってニヤニヤとしながら。
『………俺を弄って、楽しいか?』
「あァ、楽しいさね」
『…そうか』
「こうして弱っているお前さんに近付けば、惚れてくれないかと思ってねェ」
『そうか…俺も、お前に惚れれば良かったな』
「そうだねェ……まぁ、ずぅっと、おれは待っていてやるから、安心しな」
『………ほんと、お前にしとけば良かった…』
Aは囁くように言い、肩によりかかるイゾウを撫でた。
(もし俺が、イゾウに惚れてたら)(苦しまなくて、済んだのだろうか)
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おトク(プロフ) - 攻め主最高今日も快眠 (2019年7月30日 20時) (
レス) id: 8135fdc69e (このIDを非表示/違反報告)
クロノル(プロフ) - 続編おめでとうございます。楽しみにしていました。これからも楽しみにしています！これからも頑張ってください (2016年8月25日 13時) (レス) id: 8eb9e07c57 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐渡の音 | 作成日時：2016年8月23日 14時
