・ ページ32
彼の隣にゆっくりと腰を下ろす。
『……』
｢……｣
自分の気持ちに素直になると決めつつも
何から話したらいいかわからず黙り込んでしまう。
臣さんもそんな感じなんだろうか。
どれくらい無言だったかわからない。
マグカップの湯気を見つめて、俯く。
でも、この無言を終わらせたのは臣さんの方だった。
｢愛してる｣
……。
空耳かと思った。
マグカップから臣さんに視線を移す。
｢Aの言う��好き��と��情��について、考えた｣
『……』
真っ直ぐに、迷いのない目を私に向けている。
｢付き合って半年くらいで、Aが��好き��だと思った。
直人さんの彼女を考えるよりも、いつの間にか
Aのことばかり考える時間が多くて
会いたいし、一緒に居たいし、
ほかの男に取られないかいつも心配してた。
あぁ、これって、��好き��じゃんって｣
『っ……』
半年……
｢でも、Aは直人さんを好きだから
この気持ちを言ったら関係は終わりだと思った。
この関係のきっかけは、同じ傷みをもったもの同士だから。
…だからAに、それは��情��だと言われて、正直戸惑った｣
……。
私と同じ気持ちだったっていうの？
｢俺は俺で、ちゃんとAを
好きだと思って一緒にいたつもりだったから｣
さっきの岩さんの言葉が思い出される。
｢だからちゃんと、もう一度考えた。
��好き��と��情��について。
そしたら、愛の歌を歌って気づいた｣
臣さんの手が私の手に伸びて、ギュッと握られた。
｢俺、��好き��だけじゃないなって｣
『……』
やっぱり、そうだよね。
真っ直ぐな目に見られるのが辛くて、視線を下にずらす。
｢Aが初めから直人さんを好きでも、好きじゃなくても、
俺はA自身に惹かれてる｣
『……』
ぇ……
｢��情��って言うなら、それは��愛情��だと思う｣
『……あい、じょう…？』
｢ん｣
ずっと、欲しくて堪らなかった。
｢愛してるから、一緒にいたい。
それだけじゃ、傍に置く理由にならない？｣
『……本当にっ…？』
｢うん。Aが誰を好きでも、構わない。
代わりでもいい。
だから、このまま傍にいて……｣
私は、直人さんの彼女を好きな臣さんを見るのが苦しかった。
でも、それは違くて…
私が直人さんを好きだと思っていたから、
切なそうに、直人さんを見ていたんだ。
私たちは遠回りをしすぎている。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 356人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
omigirl(プロフ) - りこさん» 最後までご覧頂きありがとうございました！光栄なお言葉にも感謝です☺️ (10月19日 21時) (
レス) id: 22df992226 (このIDを非表示/違反報告)
omigirl(プロフ) - maiki042625さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。思うことはみんな同じですね...😭 (10月19日 21時) (レス) id: 22df992226 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！陰ながら楽しませてもらってました！お話とても面白かったです！！ (10月18日 21時) (レス) @page42 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
maiki042625(プロフ) - 素敵な小説ありがとうございます。私も本を読んでずっとファンでいて良かった。と再確認しました(^^) (10月18日 21時) (レス) @page42 id: 624b9b8d42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：omigirl | 作成日時：2023年10月9日 20時
