・ ページ4
・
あの日から、岩さんと私は
私の秘密の恋心の共有者となった。
ただ、それだけ。
だからといって何かが変わるわけじゃない。
臣さんは直人さんの彼女が好きだけど
あんなにモテるんだから、彼女だっていた。
私にも彼氏がいた。
寂し時に誰か傍にいてくれれば誰でもいい。
その程度。
運良く、そのまま付き合った人のことを好きになれれば。
臣さんじゃなく、他の誰かに触れて、キスをして
抱かれれば、臣さんへの想いが薄れるんじゃないか。
でもその度に、いつも薄れるどころか苦しくて。
沼の底に沈んでもう這い上がって来れないところまで
臣さんの気持ちが来てしまっていることを実感して。
なのに、学べない私は次こそはって淡い期待を抱く。
結構な頻度で彼女が変わる臣さんもきっと同じなんだろうな。
ツアーや打ち上げ、何かしらの集まりがあると
直人さんは彼女さんを連れてくる。
直人さんだけでなく、他の人も連れてきている。
臣さんが直人さんの彼女と話しているのを見ると胸が苦しい。
直人さんの彼女と直人さんが話しているのを
切なそうに見る臣さんを見るともっと苦しい。
剛典「A」
『…岩さん』
今日はツアーの打ち上げ。
お酒を持ちながら端で胸が苦しくなるその様子を眺めていると
岩さんがお酒を持ってやって来て、私のグラスをカーンと鳴らした。
『主役がこんな端っこにいていいんですか？』
剛典「疲れちゃってさー」
嘘。
私の視線の先ちゃんと捉えていたくせに。
剛典「なぁ」
『はい？』
剛典「もっと、自分のこと大切にしてやってよ」
『…え？』
岩さんは手元のグラスを意味無く回しながら言った。
剛典「お前は顔も中身も綺麗なんだから」
『…意味がわかりません』
剛典「……自分の体、安くすんなってこと」
『……』
岩さんに関係なくない？って言いたいのに、
私を本当に心配して言ってくれてるからそんなこと言えない。
剛典「そんなに好き？」
『……好き』
剛典「…そっか」
『…なんで、こんなに好きなんだろう。
諦めたいのに、諦められなくて苦しい』
剛典「辛いな」
岩さんの手が私の頭に乗って、くしゃくしゃとする。
剛典「早く幸せな恋に出会えるといいな」
『……はい』
2020年。
臣さんを好きになって2年。
コロナが酷く広がり、臣さんに会える日がぐっと減った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 356人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
omigirl(プロフ) - りこさん» 最後までご覧頂きありがとうございました！光栄なお言葉にも感謝です☺️ (10月19日 21時) (
レス) id: 22df992226 (このIDを非表示/違反報告)
omigirl(プロフ) - maiki042625さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。思うことはみんな同じですね...😭 (10月19日 21時) (レス) id: 22df992226 (このIDを非表示/違反報告)
りこ(プロフ) - 完結おめでとうございます！陰ながら楽しませてもらってました！お話とても面白かったです！！ (10月18日 21時) (レス) @page42 id: c4c1d5cc21 (このIDを非表示/違反報告)
maiki042625(プロフ) - 素敵な小説ありがとうございます。私も本を読んでずっとファンでいて良かった。と再確認しました(^^) (10月18日 21時) (レス) @page42 id: 624b9b8d42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：omigirl | 作成日時：2023年10月9日 20時
