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棚に置いてあるピアスを手に取り、それを天井の明かりにかざす。エアコンから吹く風によって、ユラユラと小さく揺れていた。
おそらく、俺の家に来た誰かの忘れ物だと思ったのだろう。その誰かとは、女だということを。
全くもって勘違いである。この家に初めてあげた女はAで、二番目などいない。
ただその誤解と神威に彼女が居ないと言ってしまった誤解の二つを解かないといけないわけであり、俺は戸惑ってしまったのだった。
Aになんて言おうか考えても頭はボケっとしていて働かないし、熱によって欲望だけが競りたってしまう。
……彼女は、俺と初めてキスをした時のことを覚えているだろうか?
俺は女々しくも、まだ頭の中に残っている。そしてそれは、ふとした時に思い出して笑ってしまうほど、俺にとっては幸せの一つだった。
付き合って一年くらいの冬。Aは受験生。彼女は自分の志望校に受かるか不安だった上に、俺のことも不安に感じていたらしい。
自分が勉強している間に気持ちが離れてしまうのではないか、口には出さなかったものの、その様な懸念も抱えていた。
それとなく俺はその心配を悟ってしまい、どうしたら安心してくれるだろうか考えたのだ。
その結果がそう、キスである。
ただAを抱きしめて、笑って、キスをして……これが唯一俺にできた、彼女への愛情表現だった。
「大丈夫」なんて言わなくても伝わった……その前例があったから、今回のことが起きてしまったのかもしれない。
言わなきゃ伝わらないこともある。それに俺は気付けなかった。
次に会った時に俺がするべきことは、名前を呼んで、謝って、好きだと言って……そして最後に、彼女を抱きしめることができたなら、Aは安心してくれるだろうか。
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美空 - 完結おめでとうございます!とても素敵な作品でした!これからも楽しみにしてます! (2017年8月29日 2時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ジュリさん» 最高ですか!! ありがとうございます! とっても嬉しいです! あんまりイチャコラを書かなかった作品ですが、ジュリさんがそう言ってくださったのなら良いです! 閲覧とコメントありがとうございました (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ナナさん» ありがとうございます! 淡々とした夏休みの小さな暇潰しにでもなってくださったら嬉しいです( ´ ∀`) 新作の沖田は甘々ですが、こちらでは書かなかった甘い沖田を書いているので閲覧よろしくお願いします!! (2017年8月19日 11時) (レス) id: 677c22d7bd (このIDを非表示/違反報告)
ジュリ - あぁ最高です! (2017年8月18日 13時) (レス) id: 84c51744c8 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - 凄く良かったです!夢中で読みました!新作も読ませていただきます!!! (2017年8月17日 23時) (レス) id: 12c1829223 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2017年7月25日 11時