20階 ページ8
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巨大なオフィスビルの中で。
何千何万の働く人々が行き交う中で。
ぽーん……
機械音と共に上下する
数少ない接点はこのエレベーター。
あの人との出会いもこのエレベーター。
…
葉桜がはかなく揺れる春。
ぽーん…
M「すいませんッ!乗りますッ」
慌てて駆け込んだエレベーターには男性が一人。
書類で重そうな革の鞄。
シワひとつない上等なスーツ。
綺麗に切りそろえられた襟足。
後ろ姿だけでわかるエリート感。
が、突然。
S「…ここは何階♪マジたけーぞ♪意味不明瞭パリピなピーポー♪」
まさに意味不明瞭な鼻歌に
M「あ、20階まで?」
S「え?はい。」
どうやら無意識だったらしい鼻歌と
振り向いた時の銀縁メガネの
ギャップにしてやられたのが
最初の出会いで。
…
以来、外回りから戻る度に
無意味にロビーで時間をつぶして
あの人を探した。
どうやら同じ棟の弁護士事務所に勤めているらしい彼に何度か巡り合う事に成功し。
某外資系保険会社のトップセールスマンの俺の鋼のコミュ力で
俺のオフィスの20階までの間
短い会話を交わすまでにこじつけたのだが。
ぽーん…
M「翔さん!ねぇこの映画見た?チケットあまt」
S「それもう見た。クソつまんねー」
ぽーん…
M「翔さん!今日晩飯どう?」
S「ダイエット中。」
ぽーん…
M「翔さん!」
S「あ、もしもし〜今エレベーターの中で」
…必殺。瞬殺。
でも。
俺は負けないッ!
某外資系保険会社トップセールスの名にかけて。
20階までの短い時間だけで
いつか口説き落としてみせるッ!
ぽーん…
M「翔さん!」
S「御意御意御意♪ごもっとも♪」
M「…まだなんも言ってません」
ぽーん…
あー俺の会社と翔さんの会社、
最上階に引っ越さねーかなー。
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作者名:ゆみ
作成日時:2019年3月15日 5時