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20ピース ページ2

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大きく蕾が膨らんだ
桜の大樹の脇に一軒のお屋敷。


S「じゅん〜!じゅん!!」

子ども部屋から聞こえる甲高い声に。


M「ふぇーん…兄さまぁ」

応えたのは小さな泣き声。


S「また泣いてるの?どうした?転んだ?お腹すいたの?あ、ちっち間に合わなかったの?だいじょうぶ。兄さまナイショに…」

M「違うってば!じゅん赤ちゃんじゃないッ」

S「はいはい。で、どうしたの」


紺色の半ズボンから伸びた細い足をだんだんさせて怒る弟を、兄のフリルがついた真っ白なシャツの腕が抱き寄せる。


M「兄さまぁ〜サトシがいないの!」

S「なんだ。そんな事。」

M「そんな事じゃないよ!探さなきゃ!」


ハムスターのサトシは兄弟の唯一の友達だ。


S「サトシ君ならさっき潤を一回目に呼んだ時にすぐ来たよ。サトシ君、いないいない〜?」

O「…?」

M「あっ!いた!良かったぁ〜」

ぽりぽりとヒマワリの種をかじりながら兄の本棚の後ろからバァと顔を出したハムスターに潤の頬が一瞬で薔薇色に染まる。



S「サトシ君は一回で呼んだら来たよ?潤よりお利口さんかもね(笑)」

クスクス笑う兄の翔に

M「むぅ〜サトシ!勝手に行っちゃメーッ!それから兄さまのおひざから下りて!」

潤の薔薇色の頬がふくらむ。


S「はい、サトシ君どいてね。潤、お父さまから船便でお土産が届いたよ。」

M「え!本当?!どこどこ??」


S「ちょっと待って。もってくるから」

M「潤も持つ!」


S「潤には重くて持てないよ」

M「もーてーるーもんッ!」

S「はいはい。じゃあ兄さまとお手手をつないで行こうね。」

M「…ん//」


仲良く手を繋いだ兄弟が来たのはおもちゃ部屋。


S「これなーんだ?」


兄が箱を開けるとそこには

20ピースの四角たちが収まっている。


M「積み木ぃ?」

S「これはね、ドイツの石の積み木だよ?」

M「じゃあ積み石だね!」

S「そうだね(笑)あのね、この積み木はいつか本物のお家を作れますようにって願いがこめられてはいるんだって」


弟の髪を撫でながら兄が父からのエアメールを読んでやる。


M「兄さまぁ」

S「ん?」

M「じゅんは大きいお家建てるの」

S「うん」

M「じゅんのお部屋は夜でもひとりで行けるようにおトイレも中に作るの」

S「うん(笑)」

M「兄さまは?」

S「え?」

M「兄さまはどんなお部屋がいい?」

S「え?」



ずっと兄さまと一緒のお家に。

小さな弟の願いが叶うまで

お屋敷の桜は微笑んでそれを見守る。


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作者名:ゆみ
作成日時:2019年3月15日 5時

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