チョコレートが甘く溶ける温度の中で《10》 ページ34
それから2人で甲板に行って星を眺めながらまずワインを開けた。
行儀が悪いのは知りつつもマルコと私、それぞれ一本ずつそれをグラスに注ぐことなくそのまま口をつけて飲む。
マルコも私も比較的アルコール度数の高いお酒が好きだから、普段はワインのようにアルコール度数が10%をきるお酒は飲まないのだが、まあたまにはいいだろう。
少しの間2人並んで黙ったままワインを傾けていたが、んじゃチョコレート食べてみるかい、というマルコの声で沈黙は破られた。
「ん。そだね」
そう言って、私は左手に持っていたチョコレートの包みをマルコに手渡す。
なんの装飾も施していないそれは、島で売られていた赤やピンクの箱に入っていたチョコレートよりも素っ気ないものに見えて、少し心が痛んだ。
少しくらい飾りつけといても良かったかも、と。
でも、お酒の肴という前提なのだ。
変に装飾してあったらその前提が崩れていまう。それに、マルコとは7年も生活を共にしているのだ。今さらなれない装飾を行なっても、逆に恥になるのは目に見えている。
マルコはそんな私の心の内なんて知る由もなく袋の中からチョコレートを1つ取り出した。
それを月の光にかざすように高く掲げて色んな角度から眺めた。
なんの変哲もないただのチョコレートなのに。
まるで大切で仕方ない物を見つめるような目で。
そんな目で、私も見つめられてみたい、そんなばかなことを思った私はもう酔ってしまったのだろうか。
「これ、なんてチョコなんだい？」
「ん？ああ、トリュフって言うらしい」
作り方は、思っていた以上に簡単だった。
市販のチョコを湯煎で溶かして、生クリームを入れて。隠し味にリキュールとブランデーを入れた。
それから氷水にそれを当てて少しだけ固めて、スプーンで1口サイズに分けてから手で丸く形を整える。最後にココアパウダーをまぶして出来上がりだ。
全体的にかなり店主の手を借りてしまったが、チョコレートを丸める過程だけは私一人でやった。
「好きな人のことを思って。願いを込めて丸めるのよ。」
と楽しげに言う店主の横で私はやっぱり顔や体を熱くしたけど、チョコレートは溶けることなくしっかり丸い形になってくれた。
帰り際に何を願ったのかしら？と店主に尋ねられたけど、その願いがなんだか私らしくもなく女の子、女の子してたから言うことができなかったことはまだ記憶に新しい。
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ユウキ(プロフ) - バレンタイン編やっばいですかっこいいいい (2019年8月19日 1時) (
レス) id: 7ad2e8f6ef (このIDを非表示/違反報告)
陽羽(プロフ) - アヤカさん» ハッピーバレンタイン！！お久しぶりです、アヤカさん。ありがとうございます！マルコさんのことをどうしたらかっこ良く書けるか悩みながら書いたお話だったので、ドキドキしたと言っていただけて嬉しいです。これからもお付き合いどうぞよろしくおねがいします。 (2015年2月14日 18時) (レス) id: cbd79c01cc (このIDを非表示/違反報告)
アヤカ(プロフ) - ハッピーバレンタイン！やっぱり、陽羽さんのこの作品大好きです！バレンタインのドキドキ感楽しんでますっっ！これからも書くの頑張ってください！毎日楽しみに待ってます！！ (2015年2月14日 17時) (レス) id: 68f56890de (このIDを非表示/違反報告)
陽羽(プロフ) - けいおんさん» けいおんさんお久しぶりです！続編までお付き合いいただきありがとうございます！またコメントいただけて、本当に嬉しいです！じいさん、私も好きですwじいさんが出てくる回数はこれからぐっと減りますが、覚えていてやってくださいwこれからもよろしくおねがいします。 (2015年2月5日 7時) (レス) id: cbd79c01cc (このIDを非表示/違反報告)
けいおん - 陽羽さん» 続編移行おめでとうございます！ 過去編に出てきた爺さんの性格最高です(=＾・＾=) 次回の更新待っています (2015年2月4日 22時) (レス) id: 816f3817c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：陽羽 | 作成日時：2015年1月24日 12時
