鍵のかかった部屋 ページ39
あの偶然の事故から数日が経った。ロー先輩とはまだ会っていない。何となくきまずいのだ。
『そろそろ帰ろっかな…』
バイトのない日。教室で授業の復習をしているといつの間にか下校時刻をまわっていた。窓の外は曇り空で、いつもより暗い夕方である。
理科準備室を横切った時、中から物音がした。誰かいるらしい。
『すみません…誰か居るんです…か…』
ﾛｰ「…お前か」
何食わぬ顔でこちらを振り向いたのはロー先輩だった。あれ以来会っていないというのに先輩は相変わらず飄々としている。
『あ、あの、お邪魔してごめんなさ…』
ﾛｰ「いや、もう帰るところだ…送るか？」
『え、ええ⁈』
小脇に抱えた分厚い本と、机に並べられた薬品。実験でもしていたのだろうか。ロー先輩は冷静な顔つきのままこちらを見ている。
『あの…えっと…本日はお日柄も良く…』
ﾛｰ「曇りだが？」
『だ、大丈夫なので！心配ご無用です！では！』
ﾛｰ「おい、待て…」
後ずさりした瞬間、こんな狭い小部屋でバランスを崩すなんて、我ながら間抜けだ。
聞こえたのは、先輩が叫ぶ声とガラガラと音を立てて物が落ちる音。倒れる棚を身体で支えた先輩は、私を抱きかかえていた。
埃っぽい室内に静けさが流れる。
『ロー先輩…！大丈夫ですか？！』
ﾛｰ「オレは平気だ」
お前は？と顔を覗き込むロー先輩。大丈夫です、と答えると安堵したような表情で笑みを見せる。
棚を押し戻すと、床にはガラスの破片や器具の残骸が散らばっていた。
『私が片付けますから、先輩は早くお帰りになって…』
ﾛｰ「そうもいかねェだろ」
一緒にしゃがみ込んで、床に散らばった破片を拾う。こんな事に巻き込んでしまって申し訳ない。…いつも先輩に迷惑かけてばかりだ。
『私……』
ﾛｰ「別に迷惑じゃねェ……大体、あんな事があったんだから、お前がきまずいのも当然だろ…気にするな…」
むしろいい機会だ、とロー先輩はフッと笑った。
この人は一体どこまで優しいのだろう。どうしていつも助けてくれるのだろう。一気に救われたような思いだ。
しかし、大きな物音だったにも関わらず、誰も来ないのはおかしい。廊下から人の声がしないし、明かりもついていない。ドアへ向かうと嫌な予感が的中してしまった。
『先輩…鍵がかかっています…』
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ルイト(プロフ) - ゾロ好き星人さん» 長らく気付かなくて申し訳ありませんでした！コメントありがとうございます。温かいお言葉を頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2021年2月23日 20時) (
レス) id: 977386f903 (このIDを非表示/違反報告)
ゾロ好き星人 - すごくこの作品が好きです！更新頑張って下さい！ (2021年1月14日 14時) (レス) id: e826f147a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルイト | 作成日時：2020年12月18日 23時
