信用 ページ37
外はすでに暗くなり、店内の暖色の明かりが増していた。そろそろバイトも上がりの時間である。
掃き掃除を終えて、再び店内へ入ると、カウンター席に艶やかなオールバックの黒髪が机に影を落としていた。
『店長？どうしたんです？』
返事はない。机に伏したままで、左手のグラスの氷がゆっくりと溶けている。こんな時間に飲んでしまってはバーの営業は出来ないだろう。しかし、そんな事は二の次だ。
『こんな所で寝てしまっては風邪引きますよ？二階の部屋で休んではどうですか？』
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「まだ居たのか、新入り…上がりの時間だろ？」
ジロリと見上げる目は据わっていて、髪も少し乱れている。残ったお酒を飲み干して、机に叩きつけるようにグラスを置いた店長さん。様子が変です…
『今日はバーはお休みですか？』
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「客が来ねェからな……いいから、てめぇはとっとと帰りやがれ」
『店長さんをこんな状態でほっとけないですよ…』
いつになく感情的な店長さん。きっとお疲れなのだろう。私に出来るのは、この頑張り屋な店長さんをゆっくり休めてあげる事だ。
『腕を上げてもらえますか？』
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「ああ？」
『私が…支えになりますから』
何だ…？と言いかけた店長を他所に、片腕を引き上げて体を起こす。そして、そのまま二階の部屋へと向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
オレは一人で良かった。一人が良かった。誰も信用しちゃいねェ。全てビジネスの為だ。そう思ってる、今も。
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「いい加減手ェ離せ…」
『ダメです！倒れちゃいますよ！』
おいおい。何が悲しくてオレは自分よりヒョロい奴に支えられてんだ。だが…ヤケ酒のせいか足もとが定まらねェ。
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「オレに構うんじゃねェよ…早く帰れって言ってるだろ」
『店長さんをベッドに運んだら帰りますよ』
あくまでオレを放っておく気はねェようだ。一体、何に必死になってんだコイツは？
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「何のつもりだ？新入り」
『休ませてあげてもいいでしょう？疲れてる店長さんを労わりたいんです…』
ふんわりと笑う新入り。労わりたいだとか、そういう飾らない言葉が一番厄介だ。聞き流す事も受け取る事も出来やしねェ。オレは誰も信用するつもりはねェのに…
ｸﾛｺﾀﾞｲﾙ「ご苦労だった…気をつけて帰れ、A」
だがその日、
オレは初めて新入りの名前を呼んだ。
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ルイト(プロフ) - ゾロ好き星人さん» 長らく気付かなくて申し訳ありませんでした！コメントありがとうございます。温かいお言葉を頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2021年2月23日 20時) (
レス) id: 977386f903 (このIDを非表示/違反報告)
ゾロ好き星人 - すごくこの作品が好きです！更新頑張って下さい！ (2021年1月14日 14時) (レス) id: e826f147a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ルイト | 作成日時：2020年12月18日 23時
