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432.※ ページ10

救急車案件ではないと聞いて
とりあえずホッとした


それでも…
この部屋は普通ではない





「姉ちゃん、姉ちゃん」

肩を掴んで揺すると

「頭…痛い…やめて…」

と小さな声が返ってきた
起きた…訳ではないか


「水飲む?薬飲む?」


端的に問うと、目を瞑ったままゆるく頷く



鞄からペットボトル
ゴミ袋から解熱剤を取り出して
姉ちゃんの口元に当てる



「水と薬、飲める?」



俺の声に、薄く口を開くけれど
絶対飲まれへんやろ…コレ


ペットボトルにストロー刺したけど
覚醒していない体では吸い上げられないみたい



「…痛……ウ…」



うわ言のように痛い痛いと繰り返す姿に
不安で不安でたまらなくなった俺は
強硬手段に出ることにした





水を自分の口に含み

薄く開く彼女の口に直接流し込んだ





大半が口から溢れたけど

喉がゴクリと動いたのがわかった





よし
これならイケる





もう一度口に水を含み
前歯で薬をくわえると

さっきと同じ要領で水と薬を流し込んだ











30分程経った頃
ベットに移動させたその時

いつもは使わないベッドの上に
綺麗に並べられている物が有ることに気が付く





俺があげたパジャマ

薬の入っていた缶

照史に貰ったキャップと指輪、
いつも飾ってあった2人の写真





捨てなかったのか
捨てられなかったのか…





姉ちゃんの様子を見ながら
ゴミ袋の中身を1つ1つ取り出していく

スーツはハンガーに掛けて壁のフックへ
靴はその下

パソコンや文房具はデスク
薬はいつもの缶にまとめローテーブルへ

スマホはパソコンの横で充電器にさした





姉ちゃんが大切にしていた照史とのアルバム

これがゴミ袋に入っていた事が
俺は一番ショックだった


あの日

どれだけ嬉しそうにしていたかも
どれだけ大切にしていたかも知ってるから


ホテルにも持ち込んで
嬉しそうに愛しそうに寂しそうに眺めているのを
何度も何度も見てきたから





ベッドに置かれたモノと
ココに入ってるモノの違いはなんやろ





表面をそっと拭ってから
薬の入った缶の横に並べた





ゴミ袋は空になり
部屋はいつもの空気を取り戻す





姉ちゃんの隣に戻ると
穏やかな表情で眠っている





叩き起こして理由を聞きたい

なんでこんな事をしたのか





その時、マネージャーから連絡が来た

あの仕事のは家に置いてるんよな

顔色も良いし穏やかに眠っている
今なら大丈夫かな


すぐに戻る事を勝手に約束して
部屋を静かに出た

433.→←431.青side※



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作者名:向日葵 | 作成日時:2022年6月8日 10時

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