検索窓
今日:10 hit、昨日:40 hit、合計:24,745 hit

465. ページ43

またテンション高く話し始めた
彼女の隣に移動すると

不思議そうな顔をした





直球で聞いたんねん





「何で突然照史の家行ったん」





その質問で
彼女の表情が変わる





「会いたくなったから」

「真っ昼間から泥酔してた理由は」

「飲みたかったから」

「何が怖いん、何が嫌なん」

「注射が怖い、点滴が嫌」





俺からの質問に
端的に答えていく

決して嘘ではない答えやけど
浅すぎる





「病院で…なんか言われたんか?」





真っ直ぐ俺を見ていた視線が

ゆっくり足元へ落ちる





「やっぱり上手く行かないよ…何もかも」





呟いた言葉は
ぼんやりとした答えやった
 




「何言われたん」

「東京には沢山の人がいるのに

 なんで寂しいんだろうね」





ようやく照史の気持ちがわかった

答えたくない人間から
聞き出す事は難しい





パッと顔を上げた彼女は笑っている





「それこそ照史に言えや
 今すぐ迎えに来るで」

「人を想い大切にするって
 難しすぎるよ〜

 大切にしたいのに
 守ってるつもりで傷付けてる」





相変わらず会話になってないけど
愚痴りたいんやったら
全部話せばええ

明るく話そうと頑張ってるけど

目が潤んでる

ホンマ、よぉ似てるわ
照史とAは





自分の気持ちを隠して
周りを優先しようとする

ちょっとAのが強いかな





「お前は十分照史を守ってる

 だから消えたいなんて言うな」





これだけは伝えなアカン
そんな事を言うたらアカン





「しんどい時は
 照史でも俺でも流星でもええから
 ちゃんと頼れって言うてるやん」





その言葉に答える事はない





「早くしなきゃ

 延びれば延びるほどに傷付けるのは
 分かってる

 でも」





そのまま
口を噤んだ彼女の背中を撫でる

俺は伝えるべきことを伝えるまで

愚痴りたい事は愚痴ればいい





もっと飲んでぶちまけて
彼女を部屋まで送ればいいかって
そんな風に思っていたのに





再び顔を上げた彼女は

「淳太くん
 今日は久しぶりに話せて楽しかった

 謝りたかった事も言えたし
 そろそろ帰ろうか」

と笑う






送ると言う俺の申し出を頑なに断って
タクシーに乗った俺が見えなくなるまで
バイバイと両手を大きく振っていた













なんで部屋まで送らなかったのか



寂しいって言った彼女が眠るまで
側に居ることも出来たのに



俺はこの日の事を深く後悔する日が
すぐにやって来るなんて
想像もしていなかった

466.→←464.



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
97人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:向日葵 | 作成日時:2022年6月8日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。