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「なぁA」
震える体を撫でながら
コッソリ深呼吸をして
静かに声を掛ける
「他にも…怖い事があるんか？」
「…」
「細かい事は言わんでええよ
あるんやったら…教えて欲しい」
腕の中で小さく頷くと
俺に強く抱きついて
再び泣き声をあげた
「ありがとな、教えてくれて」
これ以上深入り出来ない
ヘタレな彼氏でスマン
それでも
彼女が俺に望むように
俺もAに笑っとって欲しい
幸せで居て欲しい
俺も同じやで
彼女を苦しめている物がなんなのか
決して軽いものでないそれを
俺はいつか背負う事が出来るのか
分からん事ばっかりやけど
少しでも笑っていて欲しい
「ねぇ照史」
グダグダ考えていると
少し落ち着いた彼女から
不意に呼ばれた
「ん？」
「私……」
口ごもる彼女の顔を覗き込む
目を合わせてニコッと笑うと
つられて微笑んだ
「私、頑張るね」
口角が下がりかけて
必死に持ち上げる
「わかった。でも、無理しなや
しんどなったら
助けてー！って言うてな」
頬を撫でると
ニコリと笑って
今度はハッキリ頷いた
「ねぇ、ちゅーして」
泣いてスッキリしたんか
俺が帰ってきた時と同じ空気を纏い
明るい笑顔を見せた
軽くキスを落とすと
唇を尖らせる
「なんやその顔w」
「もっとして」
「泣き止んだらしたる」
「泣いてないもん」と
プクリと膨らませた頬が
たまらんな
ゆっくり優しく唇に触れる
彼女から届いた温もりに答える
「ねぇ…しよ？」
鼓膜に届く甘い彼女の言葉に
俺の諸々は簡単に反応した
組み敷いてキスを落とし
深く深く先へ進む
ゆっくり触れる度に少しずつ感じる
彼女の体の変化
柔らかかった部分が
少しずつ減っている事に気が付く
その度に
泣きじゃくってた姿が頭を掠め
手が止まる
彼女と目が合い
笑ってキスをする
「照史、大好き」と微笑む彼女を
何度も何度も抱きしめた
・
翌日
彼女の通う病院へ電話をして
安西先生に繋いでもらった
痛くて怖い注射をする時
せめて側に居られたら
なんの注射かは本人が言うまで聞かない
病名も状態も聞かない
頼ってくれた彼女を守りたい
行っても問題無いなら側に居たいと
昨日の様子を話すと
先生は「そうですか…」と呟いた後
柔らかい声で
注射ではなく点滴だと言う事と
時間と病室を教えてくれた
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
