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440. ページ18

大した事無かった電話を切って室内に戻ると
真っ青なパジャマを着て
背を向けてキッチンに立つ彼女





何かを摘みながら

缶チューハイを飲んでいる





「また飲んでるんかw」と声を掛けると

パッと振り返った彼女は

「のみたいんだもん♪」と笑いながら


あの『新しい薬』を口に放りむと

ラムネのように噛みながら

酒で流し込んでいた





「おいっ…!何してんねん!」





駆け寄る俺を特に気にもとめず
出してあったもう1錠を摘んだ

酒と薬をとりあげて確認すると
シートの半分程が無くなっていた





「これ、昼間も大量に飲んだんやろ?!
 しかも…酒で…」





手が震える



「姉ちゃんが壊れてもた」って言葉の意味が
嫌でも分かる光景



こんな事をしてしまう程に
追いつめられてる事が

助ける術も何もない事が


悲しくて悔しくて怖くて震える





そんな俺を見て彼女は

「大丈夫だよw
 このくらいじゃ、なんともないよ」

と相変わらずアルコールの入った話し方で明るく言った





「ゆっくり、深く眠りたいだけだよ
 ほかの意味はぁ、ない」


「だからって…何でこんなに…」






焦る俺と
ふわふわしてる彼女

その差に余計焦る






「なぁ、何かして欲しい事あるか?

 俺が出来ることなら何でもするから!
 
 こんな事…せんとって…」





彼女の細い肩をつかんで詰め寄る

やめてくれ
こんな事

ゆっくり深く眠りたいって
それは言葉通りなんやろうけど

悪い意味にしかとらえられない





「んー…じゃ、寝るまで側にいてほしい」

「そんな事やなくて!」

「…そんな事じゃないもん」





不貞腐れた表情で
フラフラとベッドに向かい
ちょこんと体育座りをする彼女

とりあげた酒をキッチンに置き
隣に座った




りゅせくんには秘密にしてねと前置きして
ゆっくり話す





「広い部屋も…
 
 広いベッドも…
 
 怖くて寂しくなる


 遊びに来てくれるりゅせくんとの時間が
 照史との電話が
 楽しければ楽しい程
 
 終わった後
 世界に独りぼっちみたいな気持ちになる」







膝をギュッと引き寄せながら話す姿から
寂しさが伝わる







「きょうは楽しすぎて
 1人になるのが…こわいから

 私が寝るまで、そばに居てほしい

 何もしなくていいから」





『寂しい』
『怖い』




こんな風に真っ直ぐ
マイナスな気持ちを吐き出してる所

初めて見たかも




「わかった」




昔から変わらない
彼女が俺にだけ見せるSOS

絶対離さへん

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作者名:向日葵 | 作成日時:2022年6月8日 10時

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