438. ページ16
若干足元がふらついてる彼女を
ホテルに連れ帰る
そんなに飲んでないけど
元々そんなに強くないし
更に弱くなってるように感じた
部屋の中は綺麗に片付いていた
「風呂入ってこい」
「じゅんたくん、かえらない？」
「はよ入らな帰る」
「バーカケチアホ」
酔っ払って舌足らずになった彼女
完全に以前の空気を纏うから
昔みたいに意地悪したら
拗ねてほっぺた膨らませるんちゃうかって
期待したら
思った通りの軽口が帰ってきてニヤける
俺の前だけで見せる空気感がまだある
つーか
空気感も少し昔に戻ったかも
「まだ帰らへんよ。Aが寝たら帰る」
「じゃあ、ねない」
「寝ろやw」
そんなに薬の効き目は長くないはずなのに
彼女のテンションは変わらない
薬のせいではないんかな
それが…良いことなのかも分からん
「あ」と言って窓の外を見る
目を向けると
雨が降り始めていた
「頭いたいとおもったら」
「え？頭痛いん？」
慌てて額に手を当てると
アルコールとは違う意味で熱い
「はよ言えや！ちょ…そこ座って…」
言いかけた俺の手をスルリと抜け窓際に立った
「ねぇ、じゅんたくん」
「ん？」
「空って、だれかが笑うために
かわりに泣いてくれるんだって
どこかでだれか笑ったのかな」
窓枠に手を掛けて外を見ながら
赤い顔をして呟く彼女
顔を見てから初めて見せた
寂しそうな空気感
隣に立って、頬を撫でる
「お前が笑ったんちゃうか
夕方、泣いてたんちゃうん」
「私…？泣いてないよ？」
ぶっ壊れる前に
1人で泣いてたんかと思ったのに
「あ、わかんない。泣いてたのかも」
「かもって何やねんw」
そこまで言って思い出した
そうか
覚えてないのか
「聞いたでしょ？りゅせくんから」
あぁ、流星が時間差で読んだ理由も
ちゃんと分かってるんやな
「おん。ホンマに…覚えてないん」
「んー…
かなしくてくるしい事だけ覚えてる」
「今日は病院いったんやろ？
何か言われたん」
「なんにも言われてないよ」
「ほな、何が悲しくて苦しかったん」
現状とは違う
何か新しい事があったんかも
「わかんない…覚えてない
ねぇ淳太くん」
「おん？」
「私、何捨ててたか
りゅせくんから聞いた？
教えてくれないの、何をすてたか
指輪とか
アルバムとか
薬の缶とか捨ててた？」
不安そうに縋るように尋ねる彼女
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
