372.青side ページ39
30分後
肩を落として会議室から出てきた照史
鳴り続けるスマホを
ウンザリした顔で見ながら
エントランスへ足を向けた
マネージャーに居場所を聞いて
会議室から出たら必ず通る
本社の共有スペースで待っていた
「照史」と声を掛けると
俺に視線を向け
疲れたように口角を上げた
俺の車に乗り
シートベルトを締めると
「売られた」
とため息混じりに話し始めた
犯人はツレのツレ
動機は小遣い稼ぎ
でも芸能人に疎くて
2人の事を良く知らなかったから
こんな騒ぎになると思わなかった
本人からもツレからも
謝罪された
謝られたとて
出た写真を消すことは出来ない
二度と
タイミング悪く
パパラッチにも写真を撮られた
事務所がビジネスを優先するのは
当たり前や
それでも
姉ちゃんの所にも
カメラ張ってるって
「一般人やんけ…」
世間が沙耶さんって誤解してるのを
逆手にとって
パパラッチから出された
世間の誤解を否定せずに行くなら
本当の事は話さない
新たな写真も出さない
って条件を事務所は飲んだ
当事者達の気持ちは無視かい
「姉ちゃんの誕生日なのに」
「2ヶ月ぶりやねんで？
しかもこんな…」
・
朝起きて
たまたまSNSで見かけた情報に
飛び起きて照史に連絡した
その後
姉ちゃんにも電話掛けたけど
繋がらなかった
メッセージも返ってこない
既読もつかない
淳太にも電話を掛けると
「はぁ？！」と声を上げた
しばらくワイドショーを見た後
誤解やと言い切った
きっと姉ちゃんも誤解はしていない
それより
一番心配なのはそこやない、と
「Aの時は叩かれたのに
相手が沙耶ちゃんかもってだけで
ここまで世間が手のひら返すって…
変なこと考えなきゃええけど」
「変なこと？」
「今すぐ別れるとか言い出すかもな」
照史と付き合う前
姉ちゃんは淳太に言ったこと
『可愛い芸能人ならともかく
一般人の彼女は明らかに
照史の仕事にとって邪魔になる』
「Aは照史の仕事と人生を
どこまでも守ろうとしとる
趣味も性格も立場も自分が引く事で
照史は幸せになる
だから条件を付けてん
2年って」
姉ちゃんが引いたら照史が幸せになる？
そんなん絶対ちゃうのに
大声で言えない事が悔しい
俺達は人気商売
世間の声は無視できない
決して
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年2月22日 23時
