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担当患者が運ばれてきたかと思ったら
真っ青な顔してパニックになりながらも
「恋人なんです！助けてください！」
って縋り付く人が
テレビで見かける人だったから
びっくりしたと笑ってる
俺、そんな事言うとったんか…
「あの時は必死で…
すみません、大騒ぎして」
「いえいえ
混乱されるのは当然ですよ
桐山さんが彼女の状態を説明してくださったから
すぐに適切な対応が出来ました」
必死すぎて覚えていないあの日
俺の動きが間違ってないって聞けて
本当にホッとした
「あの後、通院してきた時に
素敵な彼氏だねって言ったら
『世界一素敵ですよ。私には勿体ない』
って笑ってました」
嬉しいような
恥ずかしいような
苦笑いしか返されへん
「それと…
あなたに酷い状態を見せたことを
悔やんでました
ビックリ…したでしょ」
「正直…まだ思い出すのは怖いです
怖いと言うか…不安ですね」
何処かで倒れてるんちゃうか
しんどい思いしとるんちゃうかって
心のどっかでずーっと思っとる
「恐怖とか不安って
なかなか抜けないですもんね」
優しい声にホッとする
主治医の先生なら…聞いてもええよな
「先生…Aは治りますよね？」
病気なんやから、いつかは治る
そんな当たり前の事も確認したくなる位
俺はまだ…不安から抜け出せていない
俺の言葉に苦笑いをすると
「現代医学では…
完治は不可能とされています」
という言葉が返ってきた
「え…？」
「でも、薬も治療法も確立しているので
キチンと管理さえしていれば
日常生活は問題なく送れますよ！」
笑顔の先生
日常生活が問題なく送れるって
めっちゃ大切な事
…それ以上を求める俺は
ワガママなんやろうか
「あの…
ダイビングって
いつから出来るようになりますか？
俺と彼女の趣味なんです
はよ行きたいなぁって
いつも話してるんですよ」
「んーあの子の状態だと
ちょっと難しいなぁ
本人にも言ってるんだけど」
…難しい？
「…体調が戻ったら
また出来るんですよね？」
身を乗り出して聞く俺を見て
少し驚いた表情をすると
「ダイビングは…
ちゃんと回復すれば出来ますね
ちゃんと、回復、すれば」
意味ありげな返事に
更に不安になる
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年2月22日 23時
