301.※ ページ16
胸辺りの服をギュッと掴んで
浅く細い呼吸を繰り返してる
「え？…ﾊｧ…あき…と…ﾊｧ…く…ｹﾞﾎ」
とぎれとぎれのか細い声
真っ青な顔
これ…発作ってやつかな
隣にしゃがんで背中をさする
「薬は？使った？飲んだ？」
俺の拙い知識からの質問に
小さくうなずく彼女
そんな俺達を
心配そうに見下ろす優しい人に
恋人だと伝えお礼を言うと
安心したように去っていった
「立てるか？」の声に頷き
ゆっくり立ち上がった
直後
フラリと揺れた体
「危な！」と抱きとめる
1か月ぶりに触れた彼女は
記憶より軽く細かった
「ゴメ…ﾊｧ…目が回る…ｹﾞﾎｯ」
「喋らんでええ。すぐ病院行くわ」
「帰る…大丈…夫だか…ら」
「こんな状態で何言うてんねん…
大丈夫なわけないやろ？」
Aに病気の話聞いてから
俺も色々調べてん
今の状態は救急車呼ぶレベルやで
抱き上げて助手席へ
少しシートを倒して
シートベルトを締める
「え……車？…ダメ…ｯｹﾞﾎｹﾞﾎ」
「そんな事…
気にせんでええねん」
そう言って顔を見ると
うるんだ目で俺を見上げて
俺に手を伸ばし
首に腕を絡めた
「あ…きと…ｹﾞﾎｯ…ﾊｧ…」
こんな状況で
俺を頼ってくれてる事が嬉しいと
感じてまう俺はオカシイんかな
少し上がった彼女の背中に手を回し
抱きしめた
「居るよ、ここに居る
すぐ病院行くからな
大丈夫や
いつも行ってる病院は？」
「○○大…病院…ﾊｧ…」
「分かった
運転するから、ちょっと離れるで」
そう答え背中を撫でる
咳き込む彼女をシートに
寄りかからせる
ナビを入れてすぐに車を出した
・
絶対俺の車には乗らないA
大丈夫や言うても
責任取れないからって
こんな形で乗せる日が来るとは
夢にも思わんかった
・
「ごめん…ﾊｧ…なさ…い…」
「あきと…ｹﾞﾎｯ…ごめ…ﾊｧ」
手で顔を隠しながら
何度も何度も謝るA
撮られないように隠してるんやろ？
そんなんええねん
自分の心配せぇ
「大丈夫や、大丈夫」
そう言って髪を撫でるしか出来ない
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年1月28日 13時
