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『側に居られへんどころか
更に傷付けるような事ばかり起こって
どうしていいかわからない』
『何も出来ない
何が怖いか聞くことも出来ない』
先生の前での照史の様子を聞いて
胸が痛くてたまらない
「目が覚めてから
病室で2人が明るく話す声が聞こえたよ
入るのを、戸惑うくらい幸せそうだった
でも」
先生の表情がグッと曇る
「彼が帰った後…
僕が彼の事を褒めると
『世界一素敵だって言ってるでしょ?』
って笑ったのに
『だから、もう別れるんです
これ以上、傷つける事は出来ない』って」
姉ちゃんの優しさは
全く変わっていない
『あれだけ泣かせて苦しめたのに
人生の最後に
また苦しめるなんて耐えられない』
姉ちゃんの言葉が頭に響いて
さらに胸が痛い
「なんか…悲しくてね
職業柄、そういう悲しい別れは
結構目にするんだけど
なんだか…ねぇ……
うん」
頭をポリポリと掻きながら
話す先生は
まるでお父さんみたい
「藤井さんには、伝えておきます
中間さんには
なんか言いにくてw」
困ったように笑うと
俺の肩をポンと叩いた
「Aちゃんを
よろしくね」
「……はい」
そう言うと、近くに居た看護師さんに呼び止められて
救急車の音と共に
どこかに走っていった
俺は
もやもやした心を落ち着けながら
姉ちゃんの病室へ向かった
・
何個も点滴に繋がれて
酸素マスクを付けた姉ちゃん
照史…しんどかったやろな
病名も分からへん
恋人が
倒れたり苦しそうにしてる姿を見て
何も聞かずに居るって
聞き出すよりしんどい気がする
今は…どう思ってるんやろな
姉ちゃんの話
もうしばらく聞いていないな
小さくため息を付いて
ベッドサイドの椅子に座ると
俺が椅子を引いた音で
ゆっくり目を開けた
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作者名:向日葵 | 作成日時:2023年2月10日 22時