178. ページ42
やはり食事は体力を使うらしく
半分程食べると「疲れた」と呟く
椅子の背もたれにドサリと体重を掛けるから
落ちたりしないように
支えながらソファに移動させる
座るや否や座面に体を横に倒し
ケホケホと咳き込んだ
「薬飲んだら、もう一回寝とき
まだ、2時間はあるから」
「淳太くんは…?」
「俺は、10時から電話打ち合わせがあんねん
今日、代役の」
「そっか……」
チラリと壁時計に目を向けると
「向こうで寝る」と体を起こした
その瞬間
痛みが走ったのか
表情が一瞬険しくなる
『大丈夫か』と俺が声を掛ける前に
スッといつもの笑顔に戻って
隠しきれない辛さを纏った表情で
「静かにしてます」と唇に人差し指を当てた
・
仕事の電話やオンライン打ち合わせの時
Aは必ず
聞かないように
聞こえないように
距離を取ったり別室へ行ったりする
別にお前やったらええよって
俺も何度も言うたし
照史も言うてたらしいけど
「怖いから無理!」って笑った
今日もきっと
打ち合わせ中に
痛くても苦しくても
絶対に言わない
やから
・
「しんどくなったら、すぐに言えよ
マネージャーと話してるだけやから
別に聞かれても困らへん」
先に釘を刺すと
「はぁい」と返事だけは良い
ベッドに沈んだ所に
首まで布団を掛ける
枕元にスマホを置き
「ちゃんと、呼べよ」と頭を撫で
既にリビングで鳴っているスマホを受ける
話してる途中で
バタンと言う音がして振り向くと
仕切りの扉が閉められていた
咳き込む声が気になるけど
電話口にいるのが
制作会社の人だったから
無下にするわけにも行かず
電話口の声に集中した
切ったら鳴る電話
通知
対応に追われて気が付くと
もうすぐ11:20
そろそろ起こさな
「よろしくお願いします
はい、失礼します」
電話を切りながら
寝室のドアを開けると
既に身支度を終え
ベッドの端に座り
微笑みながら窓の外を眺めていた
65人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:向日葵 | 作成日時:2023年2月10日 22時