147.必要ない ページ11
「だからぁ
あれ以上きずつけないように
まもってたつもりだったんだけど」
「………」
「ずっと傷つけてたなんて
いわれるまで気がつかなかったよ」
「ずっとなんて」
「ずっとだよ、ずーーーーっと
泣きながら、たくさん怒ってた」
『何も話してくれない』
『そんなに俺が信用出来ないのか』
『何で俺だけ何も知らないんだよ』
『お前は俺の何なの？』
2人の最後の日
パニックになった照史が吐いた言葉
本人からも聞いた内容やけど
想像より言葉がキツくて重い
Aから聞く説明は標準語で
酔っ払ったゆるい喋り方だと
そんなに強く聞こえないけど
これが関西弁で怒鳴ったんやったら
怖かったやろな
それくらい照史も
限界やったって事やけど
「身近な人がしってるのに
自分にはかくされてるって…
つらかったと思う」
「でもそれは照史を
守ろうとしたからやん
正解なんてどこにもないやろ」
強めに言った俺と目を合わせると
緩く口角をあげながら
「結果がすべてだよ」
と呟いた
「けっかてきに…
一番そばにいてくれた人を
一番深く傷つけた
つかれてしまうほどに
ひとにきをつかう
優しい優しいあきとが
そんなことをくちにするくらい
それが…すべて」
相変わらずAの言葉は
真っ直ぐに正論を付いていて
否定も肯定も出来ない
返事に困る俺の表情をみて
酔っぱらい特有のへらりとした笑顔になる
「前にもじゅんたくんには言ったけどぉ
もうさぁ、ずーっと前から
あきとの好きな事
なぁんにも出来なくなったのぉ
ダイビングも
ゴルフも
どっか出かける事も
あきとが好きなことぜぇんぶできない
その上、側にいる事すらできなくてぇ
『俺の何なの？』なんていわれてw」
クスクスと笑う背中に漂う寂しさ
その寂しさを消すように
明るい声で言い放った
「あきとの人生に、
いまさら必要ないよ、わたしはw
たとえ、今ちょっとだけ再会！とかでも
必要ない」
心臓…痛い
「それ聞いたら…照史泣くで」
「いわなくても、ないてたよぉ
いっぱいいっぱい泣いてた
もうわたしの事なんて
あたまの片隅にもないよw」
「そんな事ないわ」
病室で頬を濡らしながら
空を見上げた寂しそうな背中
ニュースなんて見てないとええなと
笑った顔が好きやと言ってた
あれから1年ほどしか経って無くて
あの気持ちが消える事はないやろ
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年2月10日 22時
