138.黄色side 2人飲みスタート ページ2
「お酒♪お酒♪」
「はよ風呂入ってこい」
「うん！」
寝室に置いてある
ホテルのパジャマを嬉しそうに抱えて
風呂に向かうAを見送る
薄暗い部屋からは
閉園して静けさを取り戻した
仄かにライトの付くパーク内がよく見える
交代で俺が風呂入ってる間に
ルームサービスで酒の注文を任せたら
フルボトルのワインが2本も届いた
「おい、どんだけ飲む気やねん」
「えへへへ❤」
「嗜(たしな)むって意味、知っとるか？」
「美味しく楽しくたくさん飲むって事です！」
「ちゃうわ！
ただでさえ弱い癖に、疲れてねんから酔うで？！」
「ベッドが隣にあるから大丈夫！」
「何が大丈夫や！
そんで体調悪なったらどうすんねん」
「……だって
淳太くんと一緒にまた飲めるなんて
思ってなかったから嬉しいんだもん」
ソファで唇を尖らせる彼女
俺やって嬉しい
Aとまた飲めるなんて
あの日が最後かと思ってた
照史の誕生日の帰り道
この日がAを見る最後になるなんて
誰が思うん？
「私も消えたい」なんて言った後で
「私は皆を守れない、無責任でごめん」
なんて言って
寂しいって言ったのに俺は
彼女に押し切られて帰った
離れていく俺のタクシーに向かって
いつまでもいつまでも手を振っていた
豆粒のように小さくなっても
大きく手を振る影が揺れていた
あの光景を
忘れる事は無かった
「……絶対吐くなよ！」
「そんな勿体ない事しません！」
「しんどなったら…」
「もぉ！分かったから！はい！飲みますよ！」
そう言って俺にグラスを渡す
いや、注ぎすぎやろw
「乾杯♪」
「乾杯」
「んあぁあ〜！美味しい♪」
そんな彼女の声から始まった
２人だけの飲み
ウィッグも外して
おそろいのパジャマ姿で
お互いメガネに戻して
今日がどれだけ楽しかったか
身振り手振りで
目をキラキラさせながら喋り倒す姿は
あまりに懐かしくて
可愛くて
楽しくて
涙腺が緩む
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年2月10日 22時
