向日葵みたいな君3

119.ホテルへ移動 ページ26

ちょうど近くで車椅子が借りれたから
車まで戻ってホテルの駐車場へ




シートに体を沈めながら
ぼんやり景色を眺めていたAは

ホテルが見えた辺りで体を起こした





「……ここ？」

「おん、せやで
　イタリア語で『海を眺める』ってやねんて」

「すご…」




そう呟いてからは
口をポカンと開けて周囲を見回しとる

一般の受付とは違うラウンジに案内されると
軽く眉間にシワを寄せたw





サービスのドリンクがあるから
「何か飲むか？」って聞いたけど
表情も変えずに首を横に振る





今日は1番いい部屋を予約した
Aがキャッキャ言いながら
喜んでくれるやろうなって
ワクワクしとったのに

予想外の反応や





部屋の鍵を開け
先に入るように促す

突き当りにはリビングがあって

正面にある窓のカーテンは
いつも開いているから

そこからパークが見渡せる





高層階から夜景を見る時みたいに
凄い凄い！ってはしゃぐと思ってたのに





その前に立ったまま動かない彼女





隣に立って「いい眺めやろ？」と声を掛けると

「ねぇ…」と今度は困ったような表情をして
俺を見上げる





「ん？」

「今回のネズミの国…いくら使ったの？」

「え？w」

「この部屋…スイートじゃん…」

「せやで、ここからこ眺めが最高やろ？
　お前にも見せたかってん！」

「チケットもお土産も出してくれたのに
　こんなホテルまで…

　駄目だよ、私なんかにこんな…」





また言った

彼女の頬を緩く摘む





「後1回『なんか』言うたら
　ホンマに罰ゲームするからな」

「だって！」





・




昔から金を出させる事を嫌うA
いつも飲み代はワリカンやった

男をATMとしか思ってない奴も多いのに
Aは絶対にそんな事をしない

どんな小さい事でも俺を利用したりしない

そんな部分もAを心から大切やと思う部分




・




「こんな素敵な事してもらっても
　私は何も返せない！」

「違う違う」




彼女の頬を両手で包む




「今は、俺が返してんねん
　お前から貰った分
　これでも全然足らへんけど」

「私…何も…」

「なんでやねん
　お前は俺を、俺達を守ってくれた
　今もずっとずっと、ずーーーーっと
　守ってくれてる」

「私…何も守ってない。何もしてない。
　淳太くんは勘違いしてる」

「してへんよ
　俺はお前に返しても返しても足らん程に
　守ってもらった
　幸せも貰った」




困った顔のままの彼女を
ギュッと抱きしめる

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