09.お手上げ ページ10
その時
青「あーもう！ちゃうちゃう！」
黙って話を聞いていた流星が
急に大きな声を上げた
青「いちいち言葉にして並べるから
重苦しい感じになるやん」
イラッとした表情で
言葉を続ける流星に視線が集まる
青「要は姉ちゃんは照史の事が
めっちゃ好きやったって事やろ？
不器用な姉ちゃんが
不器用な答えを出した
それだけやんけ
難しい言葉にして
話を重苦しく
ややこしくすんな」
確かに流星の言う通りやな
全部をまとめると
照史の事が好きって事
照史も負けす劣らず
彼女の事が好きやった
それだけや
「それに、淳太が知らんってことは
俺達の周辺で情報持ってる人はおらん
お手上げ」
言い切った流星に
「俺…全部聞いてたわけちゃうで」
小さく言葉を返すと
「姉ちゃんが言うてたんや
淳太には全部話しとるって」と被せてきた
「全部…？」
「おん、言うてたんは少し前やけどな
淳太にも言わずに居なくなった
知られたくないのか
照史周辺と完全に切りたかったのか
他に理由があるんか
真実は、もう分からんってことや」
こんな時の判断力は
ホンマにすごい
自分の感情交えずに
事実を簡潔にまとめていく
その勢いのまま「なぁ照史」と声を掛ける
「もし姉ちゃんが見つかったら
どうする？どうしたいん」
「………」
「わからへんよな
仕事と天秤に掛けることになるから
それはつまり
照史だけの問題ちゃう」
問題はソコ
最初から分かっててんけど
実際ぶち当たると
無視して好きにする事なんて出来ないし
事務所に逆らう事も出来ない
照史自身、そして
メンバー全員の人生が掛かってるから
強行突破した先輩も居る
その時の騒ぎを思い出すと、正直背筋が凍るし
今のWESTが耐えられるかもわからん
結婚するために辞めた先輩後輩もおる
普通の人生を歩みたくて辞めていった同期もおる
この仕事を続けるって事は
そういう普通を投げ出すってこと
緑「照史……ありがとう」
橙「…？」
緑「こんなお礼言うのは不本意やけど！
めっちゃ嫌やけど！
Aさんの選択が
正しいなんて微塵も思いたくない！
けど！
今、普通に仕事出来てるのは
照史とAさんのお陰でもあるやん」
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年9月11日 3時
