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涙も赤も力任せに拭い取り
廊下に落ちている
部分的に赤黒く染まった抱きまくらも回収
汚れたタオルと一緒にゴミ袋に入れ
目に付かない所に置いた
水を取りにリビングに向かう途中
机に置いてあるリストを確認
「起きる可能性のある症状」の欄に
小さく書いてはあるものの
「すぐに救急車を呼ぶ」の欄には無い
だから
まだ大丈夫
緊急性は無い…はず
恐怖で震える手を抑えてから
寝室に戻ると
ベッドの上で膝を抱えて
タオルに顔を埋めて
何かを呟きながら泣いていた
いつも弱さを隠していた彼女の
こんな姿をみるのは
もしかしたら初めてかもしれない
隣に座って
彼女の震える背中を撫でる
「ヤダ…ヤダよ……ﾋｯ…やだ…」
そう繰り返しながら
顔を上げ俺に飛びついた
「淳太く…ん！
怖いよ…
死にたくないよ…
助けて…ｯ
1人はもう…やだよぉ！」
絞り出すように言うと
わあわあと泣き出した
彼女が笑顔で隠し続けた恐怖は
目を反らしたくなる程に深く重い
締め付けられる心臓が痛くて
何も言葉が出てこない
涙ばっかり出てくる
こんな重くてしんどいもん
ずっとずっと1人で抱えてきたんやな
頼れなんて言っておきながら
守るなんて言っておきながら
ホンマに何もしてへんかった俺
さっきまで彼女が顔を埋めていた
タオルが床に落ちている
部分的に赤黒く染まったソレが
怖くて怖くてたまらない
残酷な現実があまりにも辛くて
俺はそっと目を閉じる
一気に涙が頬に流れた
嫌や
お前が居なくなるなんて
絶対嫌や
コレが最後なんて
そんなん絶対嫌や
『最後の自由時間』
その1日がもう終わる
流星が初日から振り切ってたのは
ちゃんとコレを理解してるから
認めたくなくて
脳みそが鈍ってる俺とは違う
俺が泣いてる場合ちゃうねん
そんな暇は無い
でも
嫌なもんは嫌やし
溢れる物を止める術なんて無い
彼女はいつも1人で耐えていた
照史との事も
更に
死の恐怖とも
必死に必死に戦って
結果
余命1ヶ月って
残り3週間って
Aが一体何をしたん
何処にも持っていけない憤りで
更に涙が溢れる
ほんの少しでも
彼女の孤独が和らぐように
1人やないって思って欲しくて
まだ彼女はここに居るって
俺が感じたくて
強く抱きしめて
一緒に泣いた
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年9月11日 3時
