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仕事が終わり
彼女の部屋を覗く
静かに穏やかに眠る姿にホッとして
髪を撫でる
静かにドアを閉め
自室の布団に潜る
明日も俺は昼から夜まで仕事
流星は朝から昼まで
一緒の仕事が終わったら交代
今日はもう遅いし
明朝は家でのんびり過ごすかと
遠足前の子供みたいに
ウキウキしながら眠りについた
…
深夜
バタン！という大きな音で目が覚めた
何の…音？
睡魔に引きずられる様に目を瞑り
なんとなく耳を澄ませると
水分を含んだ咳き込む音
一気に目が覚める
飛び起きて廊下に出ると
正面のゲストルーム入口に
彼女が抱きしめていた抱きまくらに
赤黒い染みが出来て
転がっていた
そこから点々と垂れた赤
それが何なのか瞬時に理解したのに
恐怖で体が震えて
足が動かない
懸命に目でたどると
洗面所へ続いている
「A………A！」
自分の声でロックが外れたように動いた体
洗面所に駆け込むと
鏡に写った彼女と目があった
真っ青な顔して焦った表情になる
買ったばかりのスウェットにも
点々と散った赤は
生地の青と混ざって黒くなっている
水で洗ったらしい濡れた口元から
赤が溶けた水が滴っている
手にも口元にも残る赤
流星が買い揃えた青いタオルで慌てて隠す
「汚したくない」って…
こういう意味やったんか
「ｹﾞﾎ…みない…で…ｹﾞﾎｯ」
再び上がってきた咳で
白い洗面台に赤が点々と散る
手が
体が
震える
「ゴメ…見ちゃ…だめ…」と呟きながら
荒い呼吸のまま床に崩れ落ちた彼女
その姿を見て体が動く
彼女が握りしめる
赤黒く染まったタオルを抜き取り
棚から大きめのタオルを取って
彼女の口元や手を拭いてから手渡す
抱き上げて俺の寝室へ
ベッドに下ろし
「ちょっと待っとき？」と
出来るだけ優しく声をかけ
すぐに洗面所に戻る
洗面ボウルに残る赤を水で流し
落ちている青いタオルを
洗濯機に入れようとしてやめた
そのタオルの綺麗な部分で
床から廊下に落ちる赤を拭いていると
涙が重なるようにボタボタと落ち
赤が溶けて滲む
・
「最後の自由時間」
再会を喜んでる時間は無い
来週かもしれない
もしかしたら明日かもしれない
残酷なカウントダウン
カチコチと音がする
耳をふさいでも聞こえるソレから
逃げる事は出来ない
強大な闇はすぐ後ろまで迫っている
・
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年9月11日 3時
