34.嬉しい ページ35
「お〜いA〜起きろ〜！」
そんなお兄さんの声で
ゆっくり目を覚まし
「おはよ」と体を起こす
「お前なぁ、Jの人って言えよ！
とんでもないイケメンが来たから
俺超ビビったんだけど！」
「……何の…話？」
「会いに来てくれたよ」
お兄さんが俺の背中を軽く押す
何も変わっていない
寝起きのポワンとした表情
ゆっくり俺に視線が向けられる
視線が絡む直前
思わず彼女を抱きしめた
「淳太…くん？」
耳元から聞こえる、か細い声
ずっとずっと聞きたかった声
「よかった…会えた…」
あの頃より
一回り小さくなったように感じる程に
痩せた体は
抱きしめるだけで壊れてしまいそう
でも
Aや
嬉しくて
信じられなくて
それ以上言葉にならない
「…ちょぉっと…ジュース…買ってくるわ！じゃ！」
ってお兄さんの声と
ドアの閉まる音が聞こえた直後
彼女の声が再び耳に届く
「来て………くれたの？」
来るに決まってるやろ
そういつもみたいに返したいのに
とまらない涙で頷く事しか出来ない
「ありがと…ｯ…淳太くん…
会いたかった…」
会いたかったなんて
そんな泣きながら言われたら
余計泣いてまうやんけ
「俺…もｯ…」
声にならない気持ちは
抱きしめる腕の強さに込める
彼女の腕が俺の背中に回った
ゆるく…ではない
まるで力の入らない腕で
俺に必死に縋り付いているようだった
嬉しい
愛しい
悲しい
切ない
苦しい
色んな感情が心を嵐のように渦巻いてるけど
一番大きいのは
めっちゃ嬉しい
やっと会えたんや
嬉しいに決まってるやんけ
2人で抱きしめあって
しばらくの間
一緒に泣いた
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年9月11日 3時
