向日葵みたいな君 (ページ34)

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33.今からページ34

「今から…会いに行ってもいいですか」

まだ時間は、19時を回った所

病院の面会時間って…確か20時

顔が見たい

会いたい

一気に湧き上がる気持ちは
もう既に1分1秒が惜しく感じる

時間がないから…
それもあるけど

それよりも会いたい

全ての連絡先を経った彼女は

俺の連絡先と名前だけを残していた

俺を

俺だけを頼ってくれた

何度も生死の境を彷徨いながら
過酷な治療に1年間耐えた彼女が

最後に会いたい人と言われて
俺の名前を出した

早く側に行きたい

あの頃
何も守れなかった
不甲斐ない自分

今度こそ
俺が出来る事は何でもする

だから…早く会いたい

「行きましょう！」と
嬉しそうに立ち上がったお兄さんと
直ぐに店を出た

・

都内の大学病院のエントランスに
ゆっくりタクシーが滑り込む

お兄さんはとても話しやすい人で
ここに来るまでの10分間も色々な話をした

妹の事が大好きなお兄ちゃん
ってのが伝わる

俺も長男やから
その気持ちはめっちゃ分かる

こんな優しいお兄さんが
側に居ったんやな
そら甘えん坊にもなるわなw

・

少しでも快適にと
個室で過ごしているんだとか

「あいつ、寂しがり屋のくせに
　1人が好きでしょ？
　気ぃ使いだから、個室じゃないと」

うん、俺もそう思う

「闘病生活でやつれたから
　見てビックリするかも」
とも言われたけど

「痩せてても太ってても
　Aに変わりないんで
　何でもいいです
　おってくれるだけで」

生きとってくれた
連絡してくれた

それ以上何を求めるん？

言い切った俺を見て
ホッとしたように微笑んだ

彼女のネームプレートが掛かる
一番奥の病室ドアの前

バクバクしてる心臓が口から出そう

部屋の中から何か聞こえる

「あ、起きてるかも」と
お兄さんがドアを引くと

ホンマに…居った

背もたれを起こしたベッドに
沈むように眠っている

ベッドをまたぐように設置された
テーブルの上にパソコンが置いてあって

画面には動画チャンネルが着いている

「また見ながら寝てる…」

お兄さんが呆れたようにパソコンを閉じ
背もたれを少し戻す

「お、酸素も点滴も取れてる！
　体調いいと、外れるんですよ！」

嬉しそうに言いながら
入口から足が動かない俺を
ベッドサイドへ引っ張る

どれだけ探し回っても
見つからなかったAが
目の前に居る

涙が…止まらん