14. ページ15
こんな静かな所で
時間もたっぷり与えられて
余計な事ばっかり考えてしまう
久しぶりにスイッチ切りっぱなしで
口角の上げ方を忘れてしまいそう
後悔して、落ち込んで、泣いて、幸せな記憶が頭を巡る
毎日毎日この繰り返し
『A頑張れ、大丈夫って言って?』
ぽたりぽたりと落ちる点滴を見ながら
あの日の彼女を思い出す
あの点滴は何の為にしてたんやろ
『照史…怖いよ…怖い』
『私、頑張るね』
自分が同じ状況になって感じる
点滴するだけで
あんな風に震えて泣く事はない
俺に薬品名が見えないように
カバーが掛けられていたんちゃうか
もしかしたら
Aは
縁起でもない事が
あの日から何度も何度も浮かぶ
そんな事はない
何処かで元気にしとる
連絡手段を断たれた今は
想像することしかできない
それは心配やけど
どんな想像でも出来るから
なるべくポジティブな想像を
『私…幸せだよ
照史が居てくれるだけで
笑っててくれるだけで幸せなのに
側に居てくれるなんて
幸せ過ぎて死にそう』
彼女が残した愛の詰まった言葉は
俺の心をいつまでも包んでいて
毎日のように押し寄せる後悔を
少しずつ溶かしていく
そんな事まで計算してたのかと思うと
もう何一つ敵わない
終わってしまった恋なんて
簡単な言葉で片付けるには
あまりにも
俺の心に深く染み渡っている
『大好きだよ』
『幸せでいてね』
Aも
元気でおってや
幸せでおってや
俺が言った酷い言葉なんて
1秒でも早く忘れてくれ
…
…
気が付くと
外は暗くなっていた
ぼーっとしとるつもりが
いつの間にか眠っていていたんか
『ねぇ、星がキレイだよ』
そんな声が聞こえた気がして
ゆっくり起き上がり
点滴をカラカラと押して
窓際へ移動する
冬は星がよぉ見える
今日は空気が澄んでるんか
一段とキラキラして見える気がする
『私もキラキラした星になりたい』
いつもキラキラしとったやん
しんどくても
辛くても
俺にはいつもニコニコ笑顔を向けとった
花が咲くような
周りを照らすような
あの笑顔を忘れる事はない
空は繋がってるから
もう東京には居らんやろけど
同じ空見上げとったら嬉しいな
「まーた泣いとるw」
後ろから聞こえた声に振り向くと
からかうように笑う淳太くんが立っていた
96人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:向日葵 | 作成日時:2022年9月11日 3時