向日葵みたいな君 (ページ14)

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13.橙Side ページ14

あれから3ヶ月程経った年末

俺はガッツリ体調を崩した

毎年の事やけど
年末は忙しくて体調崩しがち

冬に流行るよくある感染症で高熱

ここまではよくある話やってんけど
今年は拗らせて入院になった

病は気からってよぉ言うたもんで
メンタルが落ちると悪化するんやな

たった1週間だけやけど
大きな音楽番組を休む事になったから
ニュースでも流れてしもて

「Aが見てませんように」なんて
小さく祈ったりもした

静かな白い個室で点滴を受けながら
熱に浮かされた頭で
俺はずっとAの事を考えていた

どこかで倒れたりしてへんか
入院してたりしてへんか

最後に見た彼女は
ものすごく調子が悪そうで

それを必死に隠して歩く後ろ姿は
今でも目に焼き付いている

流星に『それ多分貧血やで』って
宥めるように言われたけど

例え貧血やとしても
あの様子は普通ではない

指輪の事
写真の事

俺が彼女に言い放った事

一通り後悔して
メンタルがどん底まで落ちると

次は彼女の笑顔が浮かぶ

『優しくて格好よくて完璧なの！』

『世界で一番幸せなのは私』

『隣にいる時が
　ぎゅってしてる時が
　笑ってくれてる時が
　世界で一番幸せ』

電話口から聞こえてきた言葉

腕の中で呟いた言葉

彼女が伝えた気持ちは
俺の中に残っていて

細かい文章まで覚えて居ない事も
幸せだと笑っていた感覚が
心に深く刻まれている

ぼんやりとした頭は
幸せな思い出でいっぱいになる

・

あの日から
彼女の事を考えないように
ひたすら仕事を詰め込んだ

幸い今はSNSもあるから
仕事なんて作ればいくらでもある

周りからは「無理すんな」って言われるけど

思い出の詰まったあの部屋に居るのも

フと思い出す彼女の涙も笑顔も

何もかもしんどいから
忙しく頭動かしてる方が都合良かった

Aは必ず俺達の番組を見てるから
笑顔を見せたれ
それが一番喜ぶって流星の言葉を頼りに

カメラの前ではスイッチを切らないように
必死に喋って笑った

俺のテンションが高いって
ファン達が喜んでるってマネージャーから聞かされて

複雑な気持ちになる

仕事が終わると
何処にも行く気力なんて無いのに
メンバー含めみんなが俺を連れ出した

めっちゃ悔しいけど
Aと過ごす時間が少なかったから

彼女が隣に居ない事に
それほど違和感がなくて

そんな自分に吐き気がした