321.変わらない ページ44
いつかの電話口から
いつかの夢の中で聞こえた
この言葉を
今度は俺の口から
「夜景、綺麗やなぁ」
「…」
「ずっと隣に居ったんやな」
「…」
返事のない隣に
上っ面の話なんて見抜いてるんやろうなと
ちょっと笑ってから
本筋の話を
「そろそろ……諦めたか？」
「…」
「40年以上も見続けてるって
紛れもないストーカーやな」
「……うるさ…」
「照史は孫に囲まれて
毎日ジジ馬鹿しとる
お前の入る隙間は無いで」
「………わかって…るし」
帰ってくる悪態は
隠せないほどに湿っていて
胸が締め付けられる程に懐かしい
「命日の墓参りは欠かさないし
誕生日には星を見上げて
お前を呼んで
『俺は幸せやで』って報告してる
毎年聞いてたやろ？」
「…」
「やっぱり、ええ男やな！俺の相方」
返事が無い変わりに
小さく鼻をすする音がする
そっと視線を向けると
まっすぐ街並みに視線を向けたまま
頬に涙が1筋流れたのが見えた
昔と変わらない
悲しくて寂しそうな表情に
胸がズキンと痛くなる
「あの日から
ずっとここに居ったんか？」
返事がない所は、YESを意味する
嫌な予感が当たった
「こんな所で
1人で
照史に謝り続けて…
俺達を守り続けて…
40年も……
何してんねん…」
とっくに滲んだ俺の視界は
ついに溢れて頬に伝う
こんな所に居続ける理由は一つ
自分を許せない彼女が
自分に科した戒め
「もういい加減…自分の事、許したれよ」
望んだ姿になれるここで
彼女が選んだのは
パパラッチに脅され
ホテルへ逃げ
髪を切り
真っ黒に染め
自分を消したあの日の姿やった
「…呼ぶから…」
「ん？」
「淳太くんが…
寂しい会いたい俺を連れて行けって
何度も何度も呼ぶから…！」
「先に勝手に居なくなる奴が悪い」
「私だっ…「俺は」
言葉を遮って
言いたいことを言うたんねん
「お前に幸せで居って欲しかった
笑っとって欲しかった
それだけやのに
なんで…まだ泣いとんねん
こんな所で
1人で」
あの日、穏やかに眠った彼女を見て
やっと痛みと苦しみから開放されるんやと
思ったのに
ゆっくり眠ってるなんて
なぜか思えなかった
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向日葵(プロフ) - むつみさん» 嬉しいコメントありがとうございます！まだ少しだけ続きを書いているので、もしよかったらそちらもどうぞ✨本編に続いて涙活話が多いので、読む場所にはお気をつけて…私は電車で下書きしてて泣きそうになりました笑 (10月5日 18時) (
レス) id: b832f9ec57 (このIDを非表示/違反報告)
むつみ(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。涙が日々止まらず、本当に胸が締め付けられる思いで読んでいました。作者様とこのお話に出会えて大切な彼らを見守って応援していこうと強く思えました。長文、私事で失礼しました。今後も作品楽しみにしています！お疲れ様でした！ (10月5日 4時) (レス) @page48 id: 8b2354446d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - noonさん» コメントありがとうございます！一緒に涙活出来て嬉しいです！しばらく続きというか、サブエピというか、そんな感じのをポツポツと別章で公開しますので、またお時間ある時にどうぞ😊 (8月12日 20時) (レス) @page41 id: 06dabafe54 (このIDを非表示/違反報告)
noon(プロフ) - 嗚咽が出るほど泣きました。主さんの文才に拍手！！！お疲れ様です！！！！これからも作品楽しみにしてます！！！！！ (8月12日 12時) (レス) @page48 id: be78f40dc7 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - 楓さん» 大切な日に読んでくださり、ありがとうございます🙇♀また小話を投下いたしますので、お暇つぶしにいらしてください♪ (8月8日 21時) (レス) id: 06dabafe54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年7月19日 20時
