306.小さな箱 ページ29
階段を登りきると
砂利を踏みしめる感触と音
腕を引かれるまま少し歩くと
「ここでストップ」と
後ろからお兄さんの声が聞こえて
「目ぇ開けてええで」と流星の声
一度深呼吸してから
ゆっくり目を開く
そこには
見晴らしの良い丘の先に
溢れんばかりに花を咲かせた
大きな桜の木が立っていた
…
『桜、一緒に見ようね』
…
そうか
そういう事なんか
絶対否定しなかったのは
こういう事か
「ここならずっと一緒に桜見れるよって
伝えてってさ」
隣に立つお兄さんが
ポンと肩を叩くと
瞼にとどまる暇もなく
溢れた涙が頬を伝う
「私はこのベンチで
のんびり桜を街でも見ようかなって
ビデオ通話で見せた時に言ってた
やっと来れたって
思ってるかもしれないね」
桜の木の下にある
街を見下ろすように置かれた
小洒落たベンチ
そこに
彼女の入る箱を抱えたまま
お父様が座った
流星に腕を引かれ
その隣に俺を座らせると
俺の隣に立って箱に声を掛ける
「姉ちゃん、予想どおりいい景色やで
淳太も泣かせたし、作戦大成功！」
少し湿ってるけど
明るい流星の声に
みんながクスクス笑う
お父様が彼女の入る箱を
俺に差し出した
「持ちますか？」
驚いて返事に困っていると
流星が「俺が持つ！」と叫ぶ
目の前で箱を受け取ると
「いっぱい会いに来るからな
一緒に桜も夜景も見よな」と
Aと居った時の弟モードで
ギュッと抱きしめた
お兄さんが受け取り、箱をしばらく撫でる
お母様が受け取り、愛しそうに抱きしめる
ゆっくり俺に向き直ると
優しい笑顔で俺に差し出した
震える手で受け取ると
思っているより重かった
こんな小さな箱に入ってしまった
事実を直に感じとって胸が潰れそう
細かい刺繍の施された箱に
涙がボタボタと落ちる
それでも必死に絞り出す
「桜…綺麗やな
これから毎年、一緒に見よな」
『うん！やった！』って
明るい返事が聞こえた気がして
思い切り抱きしめて泣いた
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向日葵(プロフ) - むつみさん» 嬉しいコメントありがとうございます！まだ少しだけ続きを書いているので、もしよかったらそちらもどうぞ✨本編に続いて涙活話が多いので、読む場所にはお気をつけて…私は電車で下書きしてて泣きそうになりました笑 (10月5日 18時) (
レス) id: b832f9ec57 (このIDを非表示/違反報告)
むつみ(プロフ) - 素敵なお話をありがとうございました。涙が日々止まらず、本当に胸が締め付けられる思いで読んでいました。作者様とこのお話に出会えて大切な彼らを見守って応援していこうと強く思えました。長文、私事で失礼しました。今後も作品楽しみにしています！お疲れ様でした！ (10月5日 4時) (レス) @page48 id: 8b2354446d (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - noonさん» コメントありがとうございます！一緒に涙活出来て嬉しいです！しばらく続きというか、サブエピというか、そんな感じのをポツポツと別章で公開しますので、またお時間ある時にどうぞ😊 (8月12日 20時) (レス) @page41 id: 06dabafe54 (このIDを非表示/違反報告)
noon(プロフ) - 嗚咽が出るほど泣きました。主さんの文才に拍手！！！お疲れ様です！！！！これからも作品楽しみにしてます！！！！！ (8月12日 12時) (レス) @page48 id: be78f40dc7 (このIDを非表示/違反報告)
向日葵(プロフ) - 楓さん» 大切な日に読んでくださり、ありがとうございます🙇♀また小話を投下いたしますので、お暇つぶしにいらしてください♪ (8月8日 21時) (レス) id: 06dabafe54 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：向日葵 | 作成日時：2023年7月19日 20時
