兄貴のお気に入りに恋をした【灰谷竜胆】 (ページ36)

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｢っし、完成｣
｢わぁぁ！編み込みまで綺麗にできてる！！｣

髪を編むのなんてお手の物。

くるっと向きを変えたAがいつにも増して女らしく、
｢自分じゃ出来ないから嬉しいです！｣と満面の笑顔と熱量で
褒めてくれるもんだから何故か直視できずに
｢おー｣と短めに返事をする。

｢うっわ、さすが竜胆、Aちゃんかーわいー｣
兄貴の機嫌もこれで少しは直っただろう。

｢ねー、竜胆くん、ユメは？｣
｢お前はそれで十分だよ｣
｢え？え！それってユメが可愛いってこと？♡｣
｢そーそー｣

チラと兄貴を見るとニヤリとした顔を向けられる。
こいつの担当はキツいという意味を込めて首を横に振ると
肩をポンポンと叩かれた。
｢お疲れ｣なのか｢頑張れ｣なのか…

ご機嫌な3人と不満な俺の4人で昼飯なに食べるかって話になり｢俺けっこう腹すいてきた～｣という兄貴に｢いっそ肉行きますー？｣と横の女が乗り気で言う。

｢Aちゃんは何食べたい？｣
｢私は蘭さんの胃袋を満たすためなら何でも大丈夫ですっ！｣
｢ちょっとーそれどーゆうことぉ？｣
｢この服買ってくれた代わりに私がご馳走することになってて｣
｢それ全部買わせたの？！｣
｢俺が買ってあげたの、勘違いすんなよ｣

ピシリ、蘭の冷たい声にその場の皆がシーンとなる。

｢あ、カフェ！カフェ行きましょ？
私コーヒーの泡で絵を書いてもらいたいです！｣

｢それなら…ん、こっちだよ～｣
Aに向ける目にもう先程の冷気は纏っていなかった。

先に歩く2人を追いかけながら不満気に歩く奴1名。
(その猫かぶった態度さえなけりゃあ、)

それをまた後ろから見守りながらついて行く。

(そう言えば、)

さっきAの髪の下からのぞいた白いうなじの隅、
服の下まで続くであろうさらに白い皮膚に目がいった。

引きつったように張り付いていたその肌は切られてできた傷でも殴られてできた痣でもない。

(たぶん火傷の跡)

範囲は分からないが何でそんなところを。

ふと、青みがかった瞳を持つ男がチラついた。
たまにつるむ九井の隣によくいたその男、

名前、何だったかな。

九井がいつも呼んでた。名前は...んー、...あ、

スヌーピーだ。あいつも目立つ火傷の跡があったな。確か。