兄貴のお気に入りに恋をした【灰谷竜胆】 (ページ26)

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さて、

Aの話から気を散らしたところで
兄貴のことだ、Aに繋がるのは時間の問題で。

Aはまだ警戒心が残ってるはずだし、のこのこやって来ねぇだろ。うん。

このままメールを送らないという選択を決めつつあったのに
律儀そうなあいつは絶対ｪ服返しに来る。
兄貴と出くわす率もまだ残ってるわけで。

ああ面倒くさい、
あんな真面目女子、兄貴に釣り合わねぇだろ。
今までの女を見てみろよ。
手っ取り早く食える女ばっかじゃん。

…

…とか言う自分も何故かAのことが気になっていて、
俺や兄貴のような連中と関わることなく平和に生きろよ、と
願ってしまう。

あいつは優しいから
きっぱり断れないだろうし、なんかこう、

…危なかっしい。

…ほっとけねぇ。

夜中の鶴蝶の言葉を思い出す。

意味は全然違うけど。

中途半端に手ぇ出だすなら止めてほしい、
兄貴の腕の中にいるあいつのことを思うと胸糞悪い。
遊ばれて、終わりが来るなら遠ざけたい。

でも、もし兄貴が本気なら、俺はそれをどう見極めて
どう動くのだろうか。

取り上げて、俺の腕に閉じ込めて、
あの薄い唇をこじ開けて、

それで、

どん！パリーン！！ジャラジャラ…

目の前の鏡を見て思い切り殴る。

もともとのタレ目が尚も深く落ち、口元は緩んでいる。

自分の顔があまりにも、腑抜けていたから。

こんな感情など消え去ってくれ、思春期じゃあるまいし。

｢…っ、痛ぇ…｣