鹿楓堂よついろ日和

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空いた口が塞がらない状態とは、まさにこの事を言うんだろう。



眼鏡のイケメン店員さんは、ポカンとした顔。






「…えっと、それはどういう」



私達の話を聞いていたのか、後ろで髪を縛ったこれまたイケメン店員さんが見かねてやって来た。




『私をここで雇ってくれませんか…？』


「それは、ここで働きたいってことでしょうか？」


『はい！』





困らせてるのは十分に分かってる。



けどここで働きたいって直感で思ったら、言わずにはいられなかった。






「美人さんだし、良いと思うけどな〜俺は」


『ゎ、あの、近…っ』





ガタイのいいブルーの瞳の店員さんに、グイッと肩を組まれる。



距離近っ、力強いし…！





「ぐれ、彼女嫌がってるので離してあげて下さい」


「あーごめんごめん、癖で！」




ぐれと呼ばれたその人は、私から離れたあと「でもどうして急にそんなこと？」と続けて言った。






『…あの私、ホテルで働いているんです。

沢山のお客さんと関わりたくて選んだ仕事なんですけど、昇格して直接接客する機会も減って、元々上に立つってキャラでも無いし…。

仕事に対して、楽しいとか好きって感情が無くなっちゃったんです。

でも今日、このお店に出会って美味しいオムライス食べて、ガトーショコラに元気貰って、やっぱりお客さんを喜ばせるっていいなって思いました』






ここに足を運ぶお客さんは、皆笑顔で帰って行ったのを見て



こんなお店には滅多に出会えない気がした。






『私、接客には自信あります！働くならこのお店がいいんです。お願いします！』





…我ながら、熱弁してしまった。






でもほら、良く結婚相手にビビビっと来るって言うじゃん？



まさにあんな感じで、ビビビっと来てしまったから。






「そんなにうちで働きたいなんて…っ」


『え、っ』





さっきまで放心状態だった眼鏡のイケメン店員さん。


いきなりウルウルとした目で私の手を包んだ。





「大歓迎です…一緒に働きましょうっ」




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