鹿楓堂よついろ日和

▽１４＿＿＿episode２ ページ14

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カーテンから差す眩しい朝日で、目が覚める。



『…ん〜、なんかいい匂いする』




部屋に漂っているのは、多分焼き魚の匂い。





『おは…って、あれ。誰もいない』




ときくんが魚を焼いてるもんだと思ってキッチンに行くと、誰もいなかった。








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自分の鼻を頼りに、匂いのする方へと向かうと




『あ、何してんの〜！』


スイ「A、おはよ」


ときたか「おはようございます」




七輪で、朝から秋刀魚を焼くスイとときくん。



匂いの正体はこれだったんだ。





ぐれ「なんかいい匂いすんな！」


椿「あっ、何で秋刀魚焼いてんの〜？」




同時に椿くんとランニングを終えたぐれもやって来て。




スイ「今日は特別な日だから」


『え、何かあったっけ？』


スイ「きなこの誕生日〜」





そう嬉しそうに、抱いてるきなこをもふもふするスイ。


なるほど、だから秋刀魚なのね。




スイ「ね〜きなこ、ね〜」


『朝から甘ったるいなぁ…』


スイ「え、今なんか言った？」


『ね、美味しそう食べたい！』


スイ「ちょっと、無視って酷くない？」




そんな事より、私はお腹がペコペコなんだよ。




こんなに美味しそうな食料が目の前にあるんだから


さっきから食べたくてウズウズしてる。




ときたか「それにしても美味しそうですね」


スイ「まだあるから、今日のご飯は俺が作るよ！」


「「「『え、っ…』」」」





彼の口から出たそのセリフに、皆あからさまに嫌な顔をする。





この反応を見てお分かり頂けただろう。



そう、スイは料理が壊滅的と言っていい程に下手なのだ。




椿「やめて、絶対だめ」


スイ「え、何で？」



それも1番恐ろしいのが、本人が自覚していない事。




椿「昔スイが作った海鮮ビーフシチュー食べて寝込んだんだから」


ときたか「ナポリタンの時も、謎の黒い物体になってました」


ぐれ「鍋が燃えてぐちゃぐちゃになって爆発もしたことある」


『お茶“だけ”は美味しいんだけどな』


スイ「そんな大袈裟な〜」




決して大袈裟じゃないから。


全部、実話だから。




無言で全員立ち上がると、後ろで「おーい」と呼ぶスイの声。



…ごめん、私はときくんが調理する美味しい秋刀魚が食べたいんだ。




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