キミに出会って。《ＡＮ》

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子どもにされるような仕草をされて、なくなった手の感触を惜しむような気持ちで、自分で頭を触る。


「ニノちゃんにいいものをあげよう。」

「…いいもの？」


得意げな相葉さんの発言に、翔さんと顔を見合わせる。


「じゃーん！」


とポケットから取り出したのはまん丸の、飴？

と。


「わ！」


相葉さんの手から、飴玉が逃げるように落ちて転がる。
コロコロと翔さんのほうに行く。


「何やってんだよ雅紀…。」


翔さんが拾おうとした、途端。


ぶわ！


「「「ぉわ！？」」」


突然の、突風。
3人して体が煽られたくらいの風に、転がる飴玉は翔さんの足の間を抜けて、更に転がった。


「うお！マジか！」

「ちょ、しょーちゃん！なにしての！」

「いや、俺のせいじゃなくね！？」


わーぎゃー言いながら、相葉さんと翔さんが飴玉を追う。
2人で追うから、いざ拾おうとなると、お互いの肩が邪魔でぶつかって、また、飴玉が転がって。

それで2人が爆笑してる。


「…ふふふ。」


気づけば、つられるようにして笑ってた。
すぐさまそれに気づいた相葉さんがこちらにやってきて、つついてきた。


「なーに笑ってんの！」

「ふふふ、ホント、面白い。
2人して！」

「逃げたの、ニノの飴玉なんだからねー？」


って。


「いや、まだもらってないし！」


そういうと、ようやく飴玉を拾った翔さんから飴玉を渡された。

包み紙を開いた飴玉は、３つに割れていて。
そのひとかけらを口に入れてから、ん、と手を差し出すと、ふたりもそのかけらを口に入れた。

ふわりとかおる、みかん味。

にっこり笑う、キミの顔。




.





時計を見た翔さんに促されて屋上を後にした。

行き同様にゆっくり階段を下る。
いいって言ってるのに、2人して保健室まで送ってくれると言って。

手すりを持つ俺の右斜め前に相葉さん。
俺の後ろに翔さん。

与えられる優しさと気遣いが嬉しかった。


最後の別れ際、耳元で囁かれた、


「ニノ、雅紀のおかげかな？
いい顔してる。」


の言葉。



ちがうよ。
相葉さんだけじゃない。
翔さんがくれる優しさ。


俺のことを優しくつつんでくれて。
ふたりが、楽しそうで。
いい顔って、それはこの時間、終始、幸せだったからだよって。


言葉だけじゃ伝えきれなくて、ちょっと悔しい。





.



思い出した、あの時のように笑う声を聞きながら、いつもの場所に戻った。

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