キミに出会って。《ＡＮ》

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生まれてから運動らしい運動なんてしたことなくて、という理由か。
それとも、生まれ持って出たものか。

スポーツをやりたいなんて思ったことはない。

でも。


…ずっと見てられる。


目の前でフットワーク軽く動く相葉さんの姿に、じっと見入ってる自分を自覚する。

きっと特等席であろうこの場所で見れたことが嬉しかった。


促されてやってみたものの、俺と相葉さんだと、全くフォームが違う。
リングから離れたところから、静かな空気をまとってシュートする姿。

息を止めて、みてた。






「いやー、ニノにかっこいいって言ってもらえてよかったー！」

「…まだ言ってんの、それ…。」

「だって嬉しいもん。」

「もん、って幾つだよ…。」


そんな一言で喜んで貰えるなんて、なんてお手軽な…。

なのに、俺がバスケを潤くんとしたことある、って言った途端、
しかめっ面になって、むーむー言ってる。


…変な人。


こんなに気持ちが揺れることなんて、俺にとってあんまり、ないのにね。

そんなことわざわざ言ったりしないけど。

部活が休みな相葉さんは保健室に居座って、先生に「邪魔。」とバッサリ切られてた。

でも俺の顔を見ては「今日は特別だもんね。」なんて満面の笑みを向けてくるから、俺としても頷くしかなくて…。

俺の持ってるポータブルのゲームを頭を突き合わせてやったりしてたら、あっという間に帰宅時間。

校門の前で右と左に分かれるから、何度も送っていくよと言われたけれど、それは丁重にお断りした。

角を曲がるとき相葉さんはまだこちらを見ていて、俺が振り向いたことに気づいて全力で手を振られた。

恥ずかしくて手をあげるしか応えられなかったけど、
昨日とは打って変わった体の軽さに、今日はあっという間に家に着いた。

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