プロローグ第3話「全力お遊戯会」 ページ8
古市「ああ?」
ヤクザの顔がより一層ヤクザ顔に
いづみ「Aちゃん!あんまりいろいろ言わないほうがいいんじゃ…」
「こんなやばい奴の隣なんていやだろ」
いづみ「え!?いや、えっと、とにかく座って!」
「ほらな」
ヤクザの隣は誰だって嫌だろ
古市「ちっ」
席に着くと、ブーっという音が劇場に響く
アナウンス「本日はご来場いただき、誠にありがとうございます」
「さっきの人だ」
古市「人がいないんだろう」
いづみ「それにしても、本当に私たち以外、お客さんがいない。このまま始まっちゃうのかな」
「でも新しい人入ったんでしょ」
古市「…お前ら、さっき止めに入ったこと、後悔するなよ」
いづみ「ど、どういう意味なんだろうね…」
「さあ」
幕が開くと、かなり広い舞台に色とりどりのセットが……
「…あれさ、段ボールじゃない?」
いづみ「演出の一つなのかな」
新人「えーと、立ち位置は……」
「あ、きた」
赤髪のあどけない青年がぎくしゃくしながら、かろうじて舞台中央に登場する
新人「……」
いづみ「初舞台って言ってたけど…」
「緊張してる」
とんでもなくガチガチだ
新人『やあ、僕は門田ロミオ!高校一年生!クラスメイトの女の子に片思い中なんだ!あーあ、どうしてあの子は僕のことを好きになってくれないのかなー。僕はこんなにあの子のことが好きなのに!』
いづみ「う、うーん…」
「…」
新人『いけない、もうこんな時間!学校に行かなくちゃ!』
いづみ「え、まさか、ずっとこの子の一人芝居が続くの!?」
?「おいマテよロミオ」
「あ、違う人きた」
オウム「学校に行くんダロ。俺も連れテケ」
いづみ「まさかのオウム!?どうしよう……ある意味斬新だけど、何が面白いのかさっぱりわからない」
古市「ふう……」
「たしかに、ため息出るわ」
新人『よし!あの子に会いに行こう!』
いづみ「でも、この子、観客がこれだけしかいないのに全然めげてないな。だんだん緊張も解けてるみたいだし」
「なんか、舞台に立つのが楽しくてしょうがないっていう感じ」
新人「ありがとうございました!」
いづみ「あ、今ので終わりだったんだ」
古市「ひどい脚本だな」
「たしかに」
いづみ「…」
いづみはなんだか、あの劇団員に優しい目を向けている
「…どうしたの?」
いづみ「あの子を、もっといい舞台で、いいお芝居をさせてあげたい」
「……そっか」
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作者名:とりけらとぷす | 作成日時:2021年9月8日 19時