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いづみ「お父さんの劇団がなくなるなんて……そんなの嫌だ。この劇場は、きっとお父さんが作り上げた城だ。お父さんが演劇にすべてを捧げてきた証で、結晶。そんな宝物を壊させたりしない」
力強い、いつものいづみに戻ったようだ
「……おいヤクザ、いづみが、オレだちが逃げなかったら、さっき言ったことを撤回しろ」
古市「さっき言ったこと？」
いづみ「お父さんは逃げ出したんじゃない。この劇団を放り出したんじゃないって」
古市「お前が本当に条件をすべてクリアできたらな」
「わかった」
古市「劇団の総監督になるっていうことは、今年いっぱいこのへっぽこ劇団の面倒を見るってことだぞ」
いづみ「はい。責任をもってやり遂げます」
支配人「やったー！監督万歳！」
「おい、そっちの条件は総監督をいづみに、だけだよな。そしたら――」
いづみを支える、家族として
「オレが副監督になる。文句はないよな？」
古市「ふん、いいだろう。せいぜいやるだけやってみるんだな。どうせ来月の公園で引導が渡されることだろう。千秋楽の空っぽの劇場を見に来てやる。……それと、俺の名前はヤクザじゃねえ。古市左京だ」
いづみ「左京さん……。」
「ヤクザだろ」
古市「ちっ、引き上げるぞ、迫田！」
迫田「あいあいさー！」
支配人「後でほえ面かくなよー！」
支配人は相変わらず態度が変わるのが早い
支配人「よーし、来月の公演にむけてがんばっていきますよー！」
咲也「お、おー！」
綴「大丈夫なのか……？」
「とりあえず、首の皮一枚は繋がってる」
支配人「大船に乗ったつもりでどーんと構えてください！」
いづみ「なんでそんなに楽観的なんですか！普通なら準備に半年はかかるのに、来月公演なんて……」
支配人「監督がいるから大丈夫です！」
いづみ「だから――」
支配人「幸夫さんがいなくなってから、ずっと監督不在だったんです。僕一人で全部やってきて、どうにもならなくて……。でも、監督とAさんが来たからには、きっともう大丈夫です！元の劇団みたいにみんなで頑張っていけます。幸夫さんの娘さんなら、何も心配いりません！」
いづみ「支配人……」
支配人「ふんふんふーん、一年後には借金完済かー。完済したら、この劇場も改装しちゃおっと！」
「今のこの状況は絶対コイツのせい」
危機感というものが明らかに欠如している…
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作者名：とりけらとぷす | 作成日時：2021年9月8日 19時
