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古市「この劇場は、生意気にもこの劇団の専用劇場だ。ほとんどの劇団は専用の劇場を持たずに芝居用の小屋を借りて公演を行うが、この劇団は違う。専用劇場に団員寮まで備えているせいで、維持するだけでもかなりのコストがかかる。最盛期の八年前までは春夏秋冬、四つの演劇ユニットが毎月入れ替わりで公演を回して収益を上げていた。四組ユニットを揃えて、毎月コンスタントに公演を行わない限り、この劇団は成り立たないんだよ」
長ったらしい説明を聞いて思ったのは
「難易度高」
いづみ「そういえば、ちっちゃい頃、お父さんにそんな話を聞いた気が……」
古市「それなのに、今や団員はこのポンコツ支配人を除くと、昨日入ったっていうガキだけだ。役者が一人じゃ現実的に不可能だろう」
「たしかに」
支配人「はあ……なるほど」
古市「なるほど、じゃねえ。支配人であるお前が一番知っとくべきことだろうが」
「たしかに」
いづみ「ずいぶんこの劇団のことに詳しいんですね」
古市「――債務者の置かれている状況くらい、調べる」
「あんた、しつこそうだしね」
古市「ああ?」
支配人「そうだ!団員なら、もう一羽――」
亀吉「この亀吉に任せナ!」
古市「鳥類は頭数に入らん」
支配人「やっぱりダメか……」
古市「もう猶予はない。迫田!」
迫田「あいあいさー!」
「出た、忠犬」
支配人「そんな殺生なー!」
新人「お願いします!潰さないでください!」
いづみ「ど、どうしよう。このままじゃ…」
いづみのお父さんの劇場が潰される…
いづみはお父さんのことが好きだし、大切に想ってる
そしたら、これしかない――
「あー、そうだ。思い出した思い出した」
演技なんかしたことないが、こちとら散々女子にスマートに接してきてるんだ、表情づくりくらいはできる
古市「ああ?」
いづみ「Aちゃん?」
「あれ、いづみ忘れた?おじさんに何かあったときはこの劇団のこと頼むって言われてなかった?」
いづみ「え?Aちゃん、何言って…」
「ね?そうだよね、いづみ?」
察してくれ
いづみ「あ、あー、そうだ!思い出したー!」
支配人「え!?本当ですか!?」
ウソだけど
いづみ「ほ、ほらー、松川さんも支配人だし、何か聞いてたんじゃないですか!?」
支配人「ええ!?いや、別に」
察し悪いな…
「聞いたよ、ね?」
支配人「そ、そういえば、聞いたことがあるような…ないような?」
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作者名:とりけらとぷす | 作成日時:2021年9月8日 19時