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一話 ページ5

「魈、清心でも食べてきた?なんだか、匂いがしたから。」

「…お前にやるつもりだったが、途中で散らしてしまったんだ。」


なるほど。それで今日は手ぶらな上、少し遅れてしまったのか。
一人勝手に納得していると、魈は少し萎れたように私の隣に座った。


「……かわりを探していたが見つけられず、遅れてしまった。」

「どこか怪我したわけじゃないのならよかったよ。それに、前にも言ったけど何かを貰うために好きだって言ったわけでもないんだから、そんなに気にしなくても…。」

私が言葉を続けようとすると、魈は何か言いたげに口を動かしかけたが、恨めしそうに私を睨むだけで何も言わない。
またその顔。そして何も言わない。目を見れば一発でわかるのだが、この態度を見て察するに自分で考えて答えを導き出さないと魈は納得しなさそうで、どうにも目が合わせられない。

何か、そういう決まりでもあっただろうか。

アレよコレよと思い出そうとはしてみるものの、それらしい情報は掴めない。贈り物が仙境のものであったならまだ話は掘り下げられたが、贈り物の全ては普通に手に入る物が多い。
同じ仙人ではあるものの魈の行動の理由が掴めず、うーんと頭を捻るしかできない。

しばらく魈の隣で百面相をしていたが、まとまった答えは出ることなく、湯呑みに残ったお茶を濁りごと飲みほした。



「かわりを淹れてくる。」

私の持っていた湯呑みをひょいとさらって、魈は盆に乗った急須ごと台所へと持って行ってしまった。
お茶くらい自分で淹れられるが、この所魈は尽くしたがりになってしまったのか、断ろうとすれば嫌な顔をされてしまうので大人しくそれに甘えることにしている。

もしかしたら、オセル戦で顔を負傷したことが関係しているのかもしれないと少し思った。


確かに傷跡こそ残ったが、それほど深い外傷ではなく、今だってもう痛みは感じない。
…というより、その周辺の皮膚そのものが感覚がないというか。痛覚が死んでしまったというか。

これを言うと魈の過保護が悪化しそうな気がしたため、心にしまっておこうと思った。




何やらお茶を淹れているときに会話をしたのか、助手が魈を気に入ったらしく、「あの人になら先生を任せられます!」とキラキラな瞳で言っていた。
おまけに家でのぐうたらや失敗を話された。最近書いている小説の話を魈に口走りかけた時は流石に止めた。いや違う、別にそういうつもりで書いたんじゃないけど違うから。断じて。

二話→←閑談『籠鳥、雲を恋う。』



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なぎ - ほんま神なお話!!なんかもう全てが尊い!!!一気見しました!これからも応援させていただきます! (3月24日 9時) (レス) @page8 id: 6ae8607e98 (このIDを非表示/違反報告)
書籍姫(プロフ) - Sukidesu…(尊さによって崩れ落ちる私の図) (11月26日 21時) (レス) @page8 id: e3ea7725f8 (このIDを非表示/違反報告)
えす氏 - ほんとに面白くて、何回も読み返しちゃいます!更新待ってます‼︎ (2022年12月23日 21時) (レス) id: 62d33eea18 (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - ヴヷ…ッ!!(エッてぇてぇ…!、??)(情緒不安定)…えっ、えっ??(てぇてぇの再確認)…ヴヷー---ッッ!!!(好きですありがとうございます)(いつもてぇてぇと唐突なシリアスで心臓発作を起こしながら見てます。好きです。これからも応援してます!!長文失礼しました) (2022年11月18日 16時) (レス) @page8 id: 1aec65c647 (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - キュンです、続き楽しみにしてます!頑張ってください!! (2022年11月14日 1時) (レス) @page7 id: 11d3875155 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:とりまろ。 | 作成日時:2022年11月13日 14時

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