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「…え、なんで、いるの?」
謎の家に入ると、そこにいたのはきんとき様だった。
目の周りを真っ赤にしながら泣いている。
「私よりきんとき様がなぜこんなところにいるんですか?」
いうか言わないか迷ったように悩んでいるきんとき様。
決心を決めたようにこちらを見てきた。
「…絶対に誰にも言わない?」
「絶対に言いません!!」
「………怖いの。」
「お母様も、メイドもみんな怖いの。」
彼の話によると、昔に亡くなってしまったきんとき様のお母さまがいなくなった後、彼のお父様が連れてきた女、マリ様がいつものように、何もできないようなくずの子、と言われつずけ、ののしって来たりメイドもマリ様側についているらしく、様々な嫌がらせを受けてきたらしい。
ふつうそんなことをしたら、誰かが注意し処罰を受けるが、彼のお父様はもう一切彼に見向きをしないらしく、使用人も誰1人味方に追いてはくれないらしい。
前の人生では、そのことがきっかけで女性不振になっていた。
…こんないろんなことを知っても今の私にできることなんてない。
そんな自分に苛立ちながら、彼に少しの力になろうと彼の手を握り言葉を発する。
「きんとき様!私はあなた様にあこがれています。なんでも完ぺきにこなすそのお姿!誰にでも優しく接するその優しさ!だからこそ希望を持って下さい。
あなたはいつか、自分を救ってくれるような美しい女性と会えます。
だからこそ今頑張ってください!」
「………じゃぁ、そうなる保証は?」
「私が保証するので絶対です!!」
「ふふ、そっか、じゃぁ君の子と信じてみるよ。」
そう笑うきんとき様の笑顔は、いつもみんなの前でするような偽物の笑顔なんかじゃなく、ものすごく優しい笑顔だった。
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作者名:鬼婆 | 作成日時:2023年7月1日 20時