始まり ページ3
「器…」
呟く。
古びた本の文字列の上。
指でスーッとなぞる。
「─私が知りもしない未来。
銀河彼方から異星人がやってくるだろう。
彼らは器を探す。
我々は見つかってはいけない─」
独り言のように文面を読む。
ところどころかすれた文字は
まるで
忘れるな
と、そう呼びかけているような…
「Aーまた地下にいんの？
ご飯だから出てきなさい！」
「え！？
あ、うん。今行くよ」
声が聞こえ慌ててバンッと本を閉じる。
本の上にうっすらのっていた誇りがキラキラまう。
あらためて表紙を眺める。
まだ若干汚れている表紙を軽く払う。
「銀…の……だ？…
…消えかかってて読めないや」
「A！！」
母さんの半分怒鳴り声のような呼びかけが聞こえて
「待って、行くから！」と声をあげながら
本を元の場所へ戻す。
私は急いで部屋を出て階段を上った。
地下の書庫とは比べ物にならない太陽の明るさに
私は軽く目を細めた。
「姉さん何やってんの？
…やっぱそういう年頃なのか」
「ねえ、やめて
心えぐれた」
「そういう年頃なのか」
「二回言わなくてよろしい」
私の少し奇怪な行動に
辛辣な感想を言う弟に目をやった。
いつのまに隣にいる彼。
いつからそこにいたんだろう。
「A！冷めちゃう！！」
せかしてくる母の声に
「わかってるから！！」
と返した。
ざまぁという顔をしている隣のコイツには
一発食らわせないといけないのかもしれない。
「え、なんで振りかぶってんの？
え、ちょ、ま」
「ヘルメットかぶってんだから大丈夫だろ！」
･･？
ちょっと待って
割とガチでなんでヘルメットかぶってんの？
「は、短気すぎる」
「ねえやめて？」(切願)
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作者名：ナギサ | 作成日時：2024年3月6日 22時
