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家に帰りたい…。
じゃあここから逃げ出さなくちゃいけない。
逃げる時、
扉をあけた先にいる人は手伝ってくれるだろうか。
いや、そんなわけがない。
だって…
きっとその人が誘拐の主犯でしょ？
「あれ？まだ寝てるんかな…」
扉越しに聞きとれた声。
壁一枚隔てていたからか少しだけくぐもって聞こえた声に
あ、扉…開けられる。そう思った。
どうする？隠れる？
隠れるんだったら
死角になる場所…
扉の裏は？
一番最初に確認するのは目の前だ。
……いける。
そう思い扉の裏へしゃがんだのと扉が開いたのは同時だった。
「やっぱ寝とるんか。そろそろ起きてる頃と思ったんやけど…」
なぜか関西弁をしゃべりつつ
からんころんという下駄の音を響かせたその人は
部屋の奥へとベッドの方へと進んでいる。
小柄な人で
和服を着ているその人は案の定こちらを確認しない。
逃げよう。
………いや待って。
逃げたとしてもすぐ和服の彼が気がついて鬼ごっこになるのは明白だ。
こちらに気がついていない今なら頭を思い切りぶって気絶させてからでも…
いやそのほうがきっと安全だ。
そう、彼はこちらに気がついていない。その上小柄だ。大丈夫…。
暴力を加えるのには少し気が引けたがこれは正当防衛だ。
自分にそう言い聞かせ
足音をたてないようにゆっくりと
じわじわと近寄る。
バレないだろうか？
そんな不安に心臓の音がひどく頭に響く。
大丈夫。気づかれてない。
そしてその和服の人の真後ろへ。
深呼吸をすれば呼吸音で気づかれてしまいそうで呼吸をとめた。
大丈夫。大丈夫。いける。
拳を大きく振り上げる。
気づいていない。大丈夫。
どれくらいの強さでやればいいだろうか？
どれくらいで気絶するの？
というか私の力でちゃんと気を失ってくれるだろうか。
直前になり急激にそれらを不安に感じた。
いや大丈夫。やるしかない。
目を瞑って振りかぶった拳を大きく…
振り落とした。
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作者名：ナギサ | 作成日時：2024年3月6日 22時
